「中古ピアノって、結局いくらぐらいが普通なんだろう?」販売店のサイトを見比べると、同じアップライトでも336,600円の個体と1,150,000円の個体が並んでいます。どこに線を引けば「適正価格」と言えるのか、迷う方は多いはずです。
先に結論をお伝えします。中古アップライトピアノの相場は25万~70万円程度です。グランドピアノはヤマハやカワイなら70万円から、スタインウェイやベーゼンドルファーといった海外ブランドは600万円以上の価格帯になります。同じ種類のなかで値段を分けているのは、メーカー・年式・状態・メンテナンスの質の4つです。とくに年式の影響は大きく、同じヤマハC3でも年代によって3倍以上の差がつく例があります。
この記事では、楽器店の立場ではなく中立の立場から「なぜその値段になるのか」を仕組みで解説します。店頭価格の実例8台、購入チャネルごとの違い、買った後にかかる調律費までまとめて整理しました。
・アップライト/グランド/電子ピアノ別の中古相場
・同じ機種でも値段が倍以上違う4つの理由(年式・高さ・状態・整備)
・店頭価格の実例8台と、ヤマハC3の年代別価格
・購入後に必要な調律費と、店頭で確認すべきチェックポイント
ピアノ値段 中古の相場は「種類」で3段階に分かれる

アップライトの中古は25万~70万円が中心の価格帯
中古アップライトピアノの一般的な相場は、25万~70万円程度です。価格比較サイトの解説では「年式が古いものほど安く、新しいものは高い値段がつく傾向」と説明されています。国内メーカーの中古アップライトは25万円程から販売されている、とする販売店の案内もあります。
この幅が生まれるのは、アップライトの流通量が多いからです。家庭用として長く普及してきたぶん、製造年も保管状態もばらばらの個体が市場に出てきます。そのため同じ「中古アップライト」という言葉でも、中身は幅広くなります。
独学で調べる人がつまずきやすいのは、25万円を「最低限これだけ出せば安心」という基準だと受け取ってしまうことです。下限付近は年式が古い個体が中心です。整備の程度によっては、購入後に修理費が上乗せされることもあります。
予算を立てるときは、本体価格の上限だけで考えないのがコツです。運搬や調律の費用は別枠で見積もりを取り、合計額で比べましょう。本体が安くても、合計すると割高になるケースがあるためです。
グランドは国産70万円から、海外ブランドは600万円以上
中古グランドピアノは、ヤマハやカワイなら70万円から販売されています。一方、スタインウェイやベーゼンドルファーといった海外メーカーは600万円以上の価格帯です。国内メーカーに絞ると、相場はおおむね70万~180万円に収まります。
アップライトより価格帯が一段上がるのは、構造の違いによるものです。グランドは弦を水平に張り、ハンマーが下から弦を打ち上げる構造です。筐体が大きく、使われる部材も多くなります。さらに海外ブランドは「希少性やブランド力が高く、中古でも高額で取引されるケースが多い」とされ、状態だけでなくブランド価値が価格を押し上げます。
よくある勘違いは、「グランドの中古なら100万円以下で十分」と決めつけることです。国産でも上位モデルになると、店頭価格が2,750,000円の例があります(後述のヤマハC7E)。同じグランドでもサイズとモデルで価格帯が大きく変わる点を押さえておきましょう。
グランドを検討する場合は、まず設置できる部屋の広さを確認してください。そのうえで、小型モデルか中型以上かを決めると候補を絞りやすくなります。
電子ピアノの中古は2万~5万円で、アコースティックとは別の市場
中古電子ピアノの相場は2万~5万円です。アコースティックピアノとは桁が1つ違います。これは単に安いということではなく、値段の決まり方そのものが異なります。
理由は構造にあります。アコースティックピアノは弦と響板という「木と金属の楽器」です。適切に整備すれば長く使え、年代物にも価値が残ります。電子ピアノは音源とスピーカーで音を出す電子機器なので、年数が経つと部品の供給や故障のリスクが価格に反映されます。古い個体ほど値が下がりやすいのはこのためです。
つまずきやすいのは、「中古アコースティックは高いから、中古電子ピアノで様子を見よう」と、年式を確認せずに買うケースです。電子部品が寿命に近い個体だと、安く買っても使える期間が短くなることがあります。
電子ピアノの中古を選ぶときは、製造年と現行モデルとの世代差を必ず確認しましょう。寿命の考え方は、以下の記事で構造から解説しています。

新品との差は「1~2割」というメーカーの見方
意外と知られていないのですが、中古ピアノは「新品の半額以下が当たり前」とは限りません。カワイ公式コラムでは「中古ピアノは新品に比べおよそ1〜2割ほどお得に購入できる傾向にあります」と説明されています。
なぜ差が思ったより小さいのでしょうか。中古ピアノの販売価格には、仕入れ値だけでなく、職人による整備・修理の手間が含まれているからです。販売店の解説でも「職人が時間をかけて行う分、経費がかかります」と明記されています。弦やハンマーの調整、塗装の補修など、手を入れた分だけ価格は新品に近づきます。
もうひとつ、読み方の注意点があります。このコラムは新品を製造・販売するメーカーのもので、結論も「ピアノを購入するなら新品購入がおすすめ」となっています。一方、中古販売店はより大きな割安感を打ち出すことが多いです。どちらの立場の資料かを意識して読むと、数字の偏りに気づけます。
比較するときは「割安率」を鵜呑みにしないでください。候補の新品モデルと中古個体の実際の見積もりを並べ、整備内容の差まで含めて判断するのが確実です。
| 項目 | 電子ピアノ | アップライトピアノ | グランドピアノ |
|---|---|---|---|
| 中古相場の目安 | 2万~5万円 | 25万~70万円 | 国産70万円から/海外600万円以上 |
| 音の出し方 | 音源とスピーカー | 縦に張った弦をハンマーで打つ | 水平に張った弦を下から打つ |
| 調律1回の相場 | 調律は不要 | 12,000~18,700円 | 14,000~23,100円 |
同じ中古アップライトでも値段が倍以上違うのはなぜ?
値段を決めるのはメーカー・年式・状態・整備の4つ
中古ピアノの価格を決める主な要素は、メーカー、年式、状態、メンテナンスの質の4つです。販売店の相場解説では、これをさらに「ブランド・モデル」「状態とメンテナンス」「市場の需給」の3つに整理しています。
この4つのうち、見た目でわかるのはメーカーと年式だけです。状態と整備の質は、外から見ても判断しにくい要素です。そのため、同じメーカー・同じ年代の中古でも値段に差がつきます。中古ピアノの販売ガイドでは「同じ年代の同じ機種であっても一台一台状態が大きく違う」と指摘されています。湿度の高い部屋に置かれていた個体はカビや錆、過乾燥の部屋に置かれていた個体は木の痩せや割れが起こりやすくなります。
独学で相場を調べる人がやりがちなのは、「メーカー+型番」だけで検索して価格を比べることです。その比較には、前の持ち主の置き場所や整備の有無が入っていません。
相場を知る目的は、販売価格が妥当かどうかを自分で判断するためです。販売店の解説にもある通り、相場より高ければ価値を再評価し、安ければ隠れた問題がないかを確かめる、という使い方をしましょう。
背の高さが10cm違うと約10万円の差が出る
アップライトピアノは、背の高さでも値段が変わります。販売店の解説によると、背の高さが10cm違うと約10万円の価格差が生じるとされています。
高さが価格に効くのは、弦の長さと響板の面積に直結するからです。アップライトは弦を縦に張るので、背が高いほど長い弦を張れます。とくに低音部は弦が長いほど音程が安定し、響きに余裕が出ます。背の高いモデルが上位機種として扱われ、中古になっても高めの値がつくのはこのためです。
実例を見ると、1999年製・高さ131cmのヤマハYU3は660,000円、1996年製・高さ113cmのヤマハU50SXは450,000円で販売されていました。年式の差は3年ですが、高さの違いがはっきり価格に表れています。
つまずきやすいのは、部屋に置けるかどうかだけで高さを決めてしまうことです。低いモデルを選ぶ場合は、価格が下がる代わりに響きの余裕も小さくなる、という関係を理解したうえで選びましょう。高さごとの違いは以下の記事で解説しています。

相場より極端に安い個体は「職人の手」が入っていないことがある
相場より極端に安い中古ピアノは、整備工程が省かれている可能性があります。販売店の解説にも「相場よりも極端に安いピアノは、こうした職人による作業が行われていない」と書かれています。
中古ピアノの整備には、弦やピンの状態確認、ハンマーの整形、鍵盤の動きを揃える調整など、時間のかかる作業が多く含まれます。その手間がそのまま販売価格に乗るため、整備済みの個体は安くなりにくい構造です。裏を返すと、安い個体は「整備前の状態で売られている」ことがあります。
ここで、よくある失敗パターンを紹介します。
状況:相場の下限を下回る価格の個体を、整備内容を確認せずに購入した。
原因:内部部品が傷んでおり、購入後に修理が必要になった。カワイ公式コラムでも「購入費用を抑えるために中古を買ったのに、修理代で割高になった」ケースがあると紹介されています。
対策:購入前に「どこをメンテナンスしたのか」「次に修理が必要なタイミングはいつごろか」を販売店に確認し、整備内容を書面や説明で残してもらうこと。
安い個体がすべて悪いわけではありません。ただ、安さの理由を説明できない販売者からは買わない、という線を引いておくと失敗を減らせます。
25年を超えると響板の張りが落ちやすい
製造からの年数が長い中古ピアノは、音の厚みが失われやすくなります。カワイ公式コラムでは、25年以上経過したピアノは響板の張りが失われ、平べったい音になる傾向があると説明されています。
響板(きょうばん)=弦の振動を受けて空気に伝え、音を大きく響かせる薄い木の板。わずかに膨らんだ形(クラウン)で張力に抵抗し、その張りが響きを支えています。
オーバーホール=ピアノを分解し、消耗部品の交換や修理をまとめて行う大がかりな修理。長期間調律していないピアノでは、新品同様の金額がかかる場合もあります。
響板は木でできているため、長年の湿度変化と弦の張力を受け続けると、少しずつ膨らみ(張り)が失われます。張りが落ちると弦の振動を効率よく空気に伝えられなくなり、音が薄く聞こえます。中古の価格が年式とともに下がるのは、この変化が反映されているためです。
注意したいのは、「25年を超えたら買ってはいけない」という意味ではないことです。保管環境と整備次第で状態は大きく変わります。古い個体を検討するときは、販売店の試奏で低音から高音まで鳴らし、音の伸びと厚みを自分の耳で確かめましょう。
ヤマハとカワイ、中古の値段はどれくらい違う?

メーカー別の中古相場を1枚の表で見る
国内の2大メーカーであるヤマハとカワイは、中古市場でも流通量が多く、相場が読みやすいメーカーです。ここでは、中古販売店・買取店の公開資料に載っている相場を、編集部で1枚の表に整理しました。
| メーカー | 中古アップライト | 中古グランド | 中古市場での評価 |
|---|---|---|---|
| ヤマハ | 30万~100万円 | 80万~180万円 | 人気が高く、価格が安定しやすい |
| カワイ | 25万~70万円 | 70万~160万円 | 買取はヤマハよりわずかに控えめな傾向 |
| スタインウェイなど海外 | ― | 600万円以上 | 希少性とブランド力で高額取引が多い |
表を見ると、アップライトもグランドも、ヤマハの上限がカワイより高めに出ています。ただし、これは「ヤマハのほうが音が良い」という意味ではありません。流通量と需要の差が価格に表れていると読むのが適切です。
相場表の使い方には注意が必要です。表の数字は「その範囲に多くの個体が入る」という目安で、個別の個体の適正価格を保証するものではありません。候補が決まったら、年式と整備内容を確認し、表のどのあたりに位置する個体なのかを見極めましょう。
カワイの中古がやや控えめな値段になる理由
買取相場の解説では「ヤマハよりカワイがわずかに控えめになる傾向ですが、比較的新しいモデルは高評価」とされています。販売価格の相場もカワイのほうがやや低めです。
これは品質の差というより、需要の差です。国内の家庭や教室に普及している台数はヤマハが多く、「ヤマハの中古がほしい」という指名買いの需要が価格を支えています。需要が多いモデルは売りやすいため、販売店も高めの価格をつけやすくなります。一方カワイは、同じくらいの年式・状態でも少し低い価格で並ぶことがあります。
独学の人がつまずきやすいのは、「高いほうが良いピアノ」と考えてメーカーを先に決めてしまうことです。両社はタッチや音色の設計思想が異なり、好みは人によって分かれます。価格差だけで選ぶと、自分の好みとずれることがあります。
同じ予算なら、ヤマハとカワイの両方を試奏候補に入れておくのがコツです。予算内で選べる年式やモデルの幅が広がります。メーカーごとのタッチの違いは以下の記事で解説しています。

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海外ブランドは状態より「希少性」で値段が決まる
スタインウェイやベーゼンドルファーの中古は、600万円以上の価格帯が中心です。国産とは価格の決まり方が異なります。
国産の中古は流通量が多いため、年式や高さといった条件で相場が形成されやすい市場です。一方、海外の高級ブランドは流通量自体が少なく、「希少性やブランド力が高く、中古でも高額で取引されるケースが多い」と説明されています。つまり、年数が経っても値が下がりにくいのです。
よくある誤解は、「中古なら海外ブランドにも手が届くのでは」と考えて探し始めることです。海外ブランドの中古は、国産グランドの新品より高い価格帯になることも珍しくありません。予算が数百万円単位で変わるため、国産と同じ感覚で探すと候補がほとんど見つかりません。
海外ブランドを検討する場合は、中古でもブランドの価格帯が維持される、という前提で予算を組みましょう。整備を担当する技術者がそのブランドに対応できるかも、購入前に確認しておきたい点です。
実は60~70年代の国産ピアノに評価が集まっている
実は、中古市場では「古いから価値が低い」と一概には言えません。買取店のコラムでは「60~70年代の国産ピアノは技術力の高い職人が、1台ずつ手づくりした品質の高い製品」と紹介されています。
この評価の背景には、当時の製造方法があります。職人が手作業で組み上げた個体は、木材の選別や仕上げに手間がかけられていることが多く、整備し直せば良い状態に戻せる素地があるとされます。前の見出しで「年式が古いほど安い」と説明しましたが、それは相場全体の傾向の話です。個体単位で見ると、古い年式にも狙い目はあります。
ただし、つまずきやすい点もあります。製造から50年以上経った個体は、響板の張りや部品の消耗が進んでいる可能性があります。「手づくりだから良い」と年代だけで判断すると、整備前の個体をつかむおそれがあります。
古い年式を検討するなら、どこまで整備されているかが決め手です。弦・ハンマー・響板の状態について販売店の説明を聞き、試奏で音の伸びを確かめましょう。
ヤマハC3に見る、年式による価格差「3倍以上」の正体
C3は同じ型番でも製造年代で価格が3倍以上開く
同じ型番でも、製造年によって価格は大きく変わります。中古ピアノ販売店のヤマハC3解説ページでは、C3の販売価格を次のように紹介しています。1979~1985年製が18万~35万円、1994~1999年製が65万~73万円、2007~2012年製が100万~120万円。年代によって3倍以上の差があります。
| 分類・方式 | グランドピアノ(ヤマハCシリーズ) |
| 年代別の販売価格 | 1979~1985年製:18万~35万円 1994~1999年製:65万~73万円 2007~2012年製:100万~120万円 |
| 型番の世代区分(例) | C3B(1971~1979年)、C3A(1985~1988年)、C3E(1990~1994年)、C3L(1999~2007年)など |
| 向いている人・用途 | 年式の違いで予算を調整しながら、国産グランドを探したい人 |
これだけの差が出るのは、年式が「残りの使用期間」と「部品の消耗度」をまとめて表しているからです。新しい個体ほど響板やアクションの消耗が少なく、長く使えると見込まれるため、価格が高くなります。
ここで注意したいのは、古い年代の価格が安いからといって、その金額で弾ける状態になるとは限らないことです。価格の差には、今後の整備費の差も含まれていると考えましょう。
型番末尾のアルファベットで世代がわかる
C3には、製造時期によって異なるバージョンがあります。C3B(1971~1979年)、C3A(1985~1988年)、C3E(1990~1994年)、C3L(1999~2007年)などです。型番末尾のアルファベットは、その世代を表しています。
世代が分かれているのは、メーカーが同じモデル名を保ちながら、設計や部材を段階的に改良してきたからです。同じ「C3」でも、世代が違えば設計が少しずつ異なります。価格の差も、年式だけでなく世代の違いから生まれています。
独学で相場を調べる人がつまずきやすいのは、末尾のアルファベットを無視して「C3の中古」として一括りに比べてしまうことです。C3BとC3Lでは製造時期が20年以上離れているので、同じ価格帯で比べること自体に無理があります。
販売ページで型番を見るときは、末尾まで正確に読み取りましょう。わからなければ、どの世代の個体なのかを販売店に確認します。そのうえで、同じ世代の別の個体と価格を比べると、相場とのずれに気づけます。
製造番号から製造年を調べる手順
中古ピアノの製造年は、製造番号から調べられます。解説サイトによると、型番と製造番号は天屋根(グランドは大屋根)の中の刻印で確認でき、製造年はヤマハ公式の一覧表で引けます。
この確認が重要なのは、販売ページに書かれた「○年製」が本当に正しいかを自分で確かめられるからです。中古ピアノの選び方の解説でも「品番や製造番号は、製造された時期、使用されているパーツなどが判断できる大変重要な番号」とされ、明確に表示されているかを必ず確認するよう勧めています。
よくある失敗は、販売ページの記載だけを見て、店頭で刻印を確認しないことです。製造年が1つの世代分ずれるだけで、相場が変わる場合もあります。
店頭では、蓋を開けて刻印を見せてもらえるか聞いてみましょう。刻印を見せることを渋る販売者なら、その時点で候補から外すのも1つの判断です。確認できた製造年と型番を控えておけば、他店の同世代の個体と価格を比べる材料になります。
新しい年式ほど良い、とは言い切れない理由
年式が新しいほど価格は高くなりますが、新しい個体が必ずしも自分にとって最適とは限りません。
理由は、ピアノの状態を決めるのが年数だけではないからです。中古ピアノの解説にある通り、設置環境や使用状況によって状態は大きく変わります。新しい年式でも、湿気の多い部屋に置かれていた個体には錆が出ていることがあります。逆に古い年式でも、良い環境で定期的に調律されてきた個体は状態が保たれています。さらにカワイ公式コラムでは、中古には前のオーナーの弾き癖が残っており、頻繁に使われた鍵盤に劣化が集中するというデメリットも挙げられています。
予算の上限まで年式の新しさに振り切ると、整備や運搬に回す費用が足りなくなることがあります。年式を少し下げて、そのぶん整備の行き届いた個体を選ぶ、という考え方もあります。
判断に迷ったら、「年式」「整備履歴」「試奏したときの音」を同じ重みで比べてみましょう。3つが揃っている個体が、価格に見合った1台です。
店頭価格の実例8台から見える相場の中身

アップライトの実例4台は336,600円から1,150,000円
中古アップライトの店頭価格を、販売店の公開情報から4台紹介します。
| 種類 | モデル | 年式・特徴 | 店頭価格 |
|---|---|---|---|
| アップライト | カワイ KL-502 | 1982年製・高さ125cm・インテリア調 | 336,600円 |
| アップライト | ヤマハ U50SX | 1996年製・高さ113cm・サイレント機能外し済み | 450,000円 |
| アップライト | ヤマハ YU3 | 1999年製・高さ131cm | 660,000円 |
| アップライト | ヤマハ YUS1Wn | 2012年製・高さ121cm・木目 | 1,150,000円 |
| グランド | ヤマハ Z1B | 6畳の子供部屋にも置ける小型 | 1,045,000円 |
| グランド | カワイ KG3 | コストパフォーマンス重視の1台として紹介 | 1,045,000円 |
| グランド | ディアパソン 183B | 国産・ホワイト再塗装 | 1,188,000円→1,023,000円 |
| グランド | ヤマハ C7E | 音の伸びとパワーが特徴の高級モデル | 2,750,000円 |
アップライト4台を年式順に並べると、古い順にほぼ価格も上がっていきます。1982年製のKL-502が336,600円、2012年製のYUS1Wnが1,150,000円です。YUS1Wnは相場の上限70万円を大きく超えていますが、2012年製という新しい年式と木目仕上げが価格に表れています。
ここからわかるのは、「25万~70万円」という相場は多数の個体の中心帯にすぎない、ということです。年式が新しい個体や仕上げが特別な個体は、相場の枠を超えることがあります。販売価格を見るときは、まず相場表のどこに位置するかを確認し、枠から外れていればその理由を探しましょう。
グランドの実例4台は1,023,000円から2,750,000円
グランドの実例4台(上の表の後半)は、1,023,000円から2,750,000円の範囲に並んでいます。小型のヤマハZ1Bと、カワイKG3がどちらも1,045,000円です。
興味深いのは、メーカーの違う2台が同じ価格で並んでいることです。前の見出しで、中古相場ではカワイがやや控えめになる傾向を紹介しました。それでもKG3がZ1Bと同じ価格になっているのは、モデルの格や状態、整備内容が価格に反映されているからだと考えられます。メーカーの傾向は目安であって、個体の価格を決めるのはあくまで個体の条件です。
一方、ヤマハC7Eは2,750,000円と、ほかの3台の倍以上の価格です。C7は大型のグランドで、音の伸びとパワーを特徴とする上位モデルです。同じ国産グランドでも、サイズとモデルの格でこれだけ価格が開きます。
グランドを検討するときは、「国産グランドの中古は70万円から」という相場の下限だけで予算を組まないようにしましょう。設置スペースに合うサイズを先に決め、そのサイズの実例価格を複数集めてから予算を決めると、現実的な金額が見えてきます。
「プライスダウン」表示は元値ではなく整備内容で読む
中古ピアノの販売ページでは、値下げ表示をよく見かけます。国産グランドのディアパソン183B(ホワイト再塗装)は、通常1,188,000円から1,023,000円にプライスダウンして販売されていました。
値下げ表示を見ると、「元値より安い=お得」と感じやすいものです。しかし中古ピアノの元値は、販売店が整備内容や在庫期間をもとに決めた価格であり、市場の公定価格ではありません。値下げ幅が大きいかどうかより、値下げ後の価格が同じ条件の個体の相場と比べて妥当かどうかが大切です。
この例では、ホワイトへの再塗装という付加的な作業が入っています。再塗装は見た目を一新できる一方、元の塗装とは異なる仕上げになります。見た目の好みが合えば魅力になりますが、塗装の品質は販売店の技術に左右されます。
値下げ表示に出会ったら、「値下げの理由」を販売店に聞いてみましょう。在庫期間が長い、展示入れ替えの時期、といった理由なら納得できます。理由が曖昧な場合は、整備の状態を改めて確認するのが安心です。
実例から予算を逆算するときの考え方
実例の価格は、自分の予算を決める手がかりになります。ただし、実例をそのまま「この価格で買える」と受け取るのは避けましょう。
理由は、実例8台がそれぞれ異なる販売店・異なる時期の価格だからです。中古ピアノは1台ごとに状態が異なり、同じモデルが同じ価格で再び並ぶとは限りません。実例は「この条件ならこのくらいの価格がつく」という相場感をつかむための材料です。
予算を逆算するときは、次の順番で考えると迷いにくくなります。まず、種類(アップライトかグランドか)と設置スペースに合うサイズを決めます。次に、そのサイズで許容できる年式の範囲を決めます。最後に、実例や相場表から該当する価格帯を拾い、そこに運搬費と初回の調律費を足します。
独学の人がやりがちなのは、気に入った1台の価格だけを基準に予算を組むことです。1台だけでは相場とのずれに気づけません。同じ条件の個体を最低でも3台ほど並べてから判断すると、高すぎる個体と安すぎる個体を見分けやすくなります。
楽器店・フリマ・オークション、どこで買うと失敗しにくい?
楽器販売店の強みは「実物確認」と「整備履歴」
中古ピアノの主な入手先は、楽器販売店、フリマアプリ、ネットオークションなどです。このうち楽器販売店は、実物を確認できる点で失敗が起きにくいチャネルです。
ピアノレンタル事業者の解説では「実物を確認できる中古ピアノ販売店で選ぶことがおすすめ」とされ、購入の際は「どこをメンテナンスしたのか」「次に修理が必要なタイミングはいつごろか」を確認することが重要だと書かれています。ピアノは1台ごとに状態が違うため、写真や説明文だけでは判断材料が足りません。販売店なら、試奏と整備内容の説明をセットで受けられます。
ただし、販売店で買えば安心、というわけでもありません。販売店によって整備の範囲や保証の内容は異なります。「整備済み」と書かれていても、どこまで手を入れたのかは店によってさまざまです。
中古ピアノの選び方の解説にもあるように、価格だけで決めるのではなく、購入後の保証や整備体制、相談のしやすさを確認しましょう。複数の販売店で同じ質問をしてみると、説明の丁寧さの違いがはっきりします。
展示数が100台ほどある店なら弾き比べで選べる
販売店を選ぶときは、展示台数に注目しましょう。前出の解説では、ある程度の売り場面積を持ち、中古ピアノを多く扱う店舗やショールームに行くことが勧められています。展示数が少ないと満足に選べないため、「だいたい100台ほどあれば予算内のピアノを弾き比べながら選べる」とされています。
弾き比べが大切なのは、ピアノの音やタッチの違いは、1台だけ弾いても判断しにくいからです。同じ予算帯の複数台を続けて弾くと、鍵盤の重さの違いや、低音の響きの差がはっきりわかります。相場表の数字だけではわからない「その個体の価値」を、耳と指で確かめられます。
よくあるつまずきは、最初に弾いた1台の印象で決めてしまうことです。最初の1台が基準になると、後から弾く個体を正しく比べられなくなります。
弾き比べるときは、同じフレーズを全台で弾くのがコツです。低音から高音まで使う音階や、強弱をつけた和音を決めておくと、差が比べやすくなります。気になった個体は、型番と製造年をメモしておきましょう。
フリマ・オークションは本体価格の外にリスクがある
フリマアプリやネットオークションは、販売店より安い価格で出品されていることがあります。ただ、本体価格の外に見えないリスクとコストがあることを知っておく必要があります。
個人間の売買では、多くの場合、整備を受けていない「そのままの状態」のピアノが出品されます。先に紹介したように、相場より極端に安い個体は職人による作業が行われていない可能性があります。さらに、ピアノは重量物なので専門業者による運搬が必要です。搬出・搬入の条件によっては費用が膨らみます。購入後の調律も、個人売買では自分で手配することになります。
状況:オークションで外観のきれいな写真を見て落札した。
原因:内部(上前板の中)を確認しておらず、湿気による錆やカビ、弦やハンマーの消耗が隠れていた。運搬費と調律費も別にかかり、合計額が販売店の整備済み個体と変わらなくなった。
対策:個人間取引では、内部写真・製造番号・調律履歴の提示を出品者に依頼する。運搬と調律の見積もりを落札前に取り、合計額で販売店と比べること。
個人間取引が必ず損をするわけではありません。ピアノの状態を自分で判断できる人や、信頼できる技術者に同行してもらえる人にとっては、選択肢の1つになります。
売る側の査定額は業者で10万円以上違う
中古ピアノの値段を理解するには、売る側の事情も知っておくと役立ちます。買取の比較解説では「業者によって査定額に10万円以上の差が出ることは珍しくない」とされ、買取方法や手数料の有無も異なるため、複数の業者を比較することが大切だと説明されています。
この差は、そのまま販売価格の幅につながります。販売店は、買い取った個体に整備費と利益を乗せて販売価格を決めます。どの業者から仕入れたのか、どこまで整備したのかによって、同じような個体でも店頭価格が変わります。また、中古ピアノ市場は海外向け需要の影響もあり、近年拡大しているとされます。国内の需要だけでなく、海外への流通も相場を支えています。
購入する側にとってのポイントは、「店頭価格=その個体の絶対的な価値」ではないということです。仕入れと整備の条件によって、価格は店ごとに変わります。
将来の買い替えを考えているなら、買取で評価されやすいメーカーや年式を選んでおくのも1つの考え方です。売却時の査定額の決まり方は、以下の記事で詳しく解説しています。

使わなくなったピアノをどうするか。弾き手がいなくなって10年、蓋を開けるのは大掃除のときだけ、それでも部屋の一角を占め続けている——という状態は珍しくありません…
買った後にいくらかかる?調律費と店頭での見極め方
調律1回はアップライト12,000~18,700円が相場
中古ピアノは、買った後も定期的な調律が必要です。中古ピアノ販売店による調律料金の調査(2026年7月・12社)によると、調律1回の相場はアップライトが12,000~18,700円、グランドが14,000~23,100円です。出張費が別途かかる場合もあり、無料~3,300円程度が中心とされています。
調律が必要なのは、アコースティックピアノの弦が、張力と湿度変化によって少しずつ緩み、音程がずれていくからです。とくに中古ピアノは、移動によって環境が変わるため、購入後しばらくは音程が不安定になりやすい傾向があります。
予算を立てるときにつまずきやすいのは、本体価格だけで予算を使い切ってしまい、購入後の調律費を想定していないことです。調律を先送りにすると、次の項目で説明する割増料金につながります。
購入時には、販売価格に初回の調律が含まれているかを確認しましょう。含まれていない場合は、調律1回分を最初の予算に組み込んでおくと安心です。調律料金の内訳は、以下の記事で解説しています。

ピアノの調律を頼もうと思って値段を調べると、1万円台の業者もあれば2万円を超えるところもあって、どれが妥当なのか分からなくなります。同じ「調律」という言葉なのに…
前回の調律から間が空くほど割増になる
調律料金は、前回の調律からの間隔によって変わります。同じ調査では、前回の調律から間が空くほど割増料金がかかり、1年ごとに+1,000~2,200円が目安とされています。
割増になるのは、作業量が増えるからです。長く調律していないピアノは音程のずれが大きくなるため、1回で正しい音程まで戻すのに手間がかかります。弦が大きく緩んでいると、一度に張り直すと弦に負担がかかるため、複数回に分けて調律することもあります。さらに、数年間調律していないピアノは修理箇所が必然的に増えます。オーバーホール(分解修理)になると、新品同様の金額がかかる場合もあると説明されています。
中古ピアノで起きやすいのは、「前の持ち主が長く調律していなかった個体」を買うケースです。購入前に調律履歴がわからないと、買った直後の調律で割増や修理が発生することがあります。
調査の結論にもある通り、1年ごとの定期調律が長い目で見ればいちばんの節約になります。購入時には、前回の調律時期を必ず確認しましょう。
店頭で確認したい4つのチェックポイント
中古ピアノを店頭で選ぶときは、外観・内部・番号・音の4つを順に確認すると、見落としを減らせます。
この順番にしているのは、外から見える情報から内部の情報へと段階を踏むためです。ヤマハの販売店によるピアノ選びのポイントでも、外観から品質を推し量ることと、上前板を開けて内部を確認することが勧められています。
つまずきやすいのは、Step4の試奏だけで判断してしまうことです。音が良くても、内部に錆が出ていれば後で修理が必要になります。4つを揃えて確認し、1つでも気になる点があれば販売店に理由を尋ねましょう。
読者タイプ別:新品と中古、どちらが向いているか
新品と中古のどちらが良いかは、ピアノを弾く目的と予算の組み方で変わります。読者のタイプ別に整理してみます。
大人になってピアノを再開する人は、中古が選択肢に入りやすいタイプです。求めるタッチや音の好みがある程度はっきりしているので、弾き比べで自分に合う個体を見つけやすいからです。カワイ公式コラムで挙げられている「グレードの高いピアノを割安で入手できるチャンス」を活かしやすい立場です。
子どもにピアノを習わせ始める保護者は、長く使うことと保証を重視するなら新品も検討の価値があります。新品には1~5年ほどのメーカー保証が付属し、カラーバリエーションやコンパクトなサイズも豊富です。中古を選ぶ場合は、販売店の保証と整備体制を重視しましょう。
予算を最優先したい人は、本体価格だけでなく調律費と運搬費を含めた合計で比べましょう。本体が安くても、整備されていない個体は修理代がかさむことがあります。
また、新品には1~3年の弾き込み期間があり、初期段階では音がおとなしい場合がある、というデメリットもあります。すぐに響きのある音で練習したい人にとっては、状態の良い中古のほうが合う場合もあります。
まとめ:中古ピアノの値段は「相場の枠」と「個体の条件」で読む
中古ピアノの値段は、相場表の数字だけでは判断できません。同じ型番でも年式・高さ・保管環境・整備の程度で価格が変わるため、「相場の枠のどこにその個体がいるのか」「枠から外れているならなぜか」を読むことが、後悔しない買い方につながります。最初の一歩として、気になるモデルの型番と製造年を控え、中古ピアノを多く展示している販売店で同じ価格帯の個体を3台ほど弾き比べてみてください。その際は「どこをメンテナンスしたのか」「前回の調律はいつか」の2つを必ず質問しましょう。
※価格・相場は2026年9月の調査時点の情報です。最新情報は各公式サイト・販売店でご確認ください。

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