連弾の曲を決めようとしてランキングを開いたものの、上から順に見ていくうちに手が止まった。そんな経験はないでしょうか。1位の曲が自分たちに合うとは限らないし、そもそもランキングが何を集計した順位なのかが書かれていないことも多いからです。
先に結論をお伝えします。連弾のランキングで上位に並ぶのは「楽譜が売れた曲」であって「2人で弾きやすい曲」ではありません。連弾は1台のピアノを2人で分け合う演奏形態なので、曲の人気と、その曲が自分たちのペアに合うかどうかは、まったく別の物差しで決まります。ランキングは候補を集めるために使い、最終的な決定は難易度の段階表とプリモ・セコンドの役割分担で行う。この二段構えにすると選曲の失敗が減ります。
この記事では、楽譜販売サイトの月間ランキング上位10曲を実際のデータで確認したうえで、発表会の選曲情報サイトが示す6段階の難易度区分に並べ直します。さらに、ピティナ・ピアノコンペティションのデュオ部門が採用しているグレード分けや、連弾専用の教本の設計まで、一次情報にあたりながら整理していきます。
・楽譜販売ランキングの上位10曲と、そこに表れるジャンルの偏り
・ランキング順に選ぶと噛み合わなくなる理由と、代わりに使う難易度6段階の分類
・プリモとセコンドの役割の違いと、「セコンドは簡単」という誤解の正体
・コンクールのデュオ部門で求められる曲数と年齢区分、教本から入る場合の進め方
「ピアノ連弾 人気ランキング」の上位は楽譜の売れ行きで決まっている

2026年8月の月間販売ランキングに並んだ10曲
まず実際のデータを見てみましょう。連弾楽譜を扱うsound24の月間販売ランキングでは、2026年8月の第1位が「猫ふんじゃった(NYANGOアレンジ)」、第2位が「どこまでも〜How Far I’ll Go〜(Disney’s Moana)」、第3位が「チャルダッシュ(Czardas)」でした。以下、第4位「名探偵コナン・メインテーマ」、第5位「Be Our Guest(Disney’s Beauty and the Beast)」と続きます。
この順位は演奏された回数でも、発表会で選ばれた数でもありません。楽譜が売れた数の集計です。つまり「これから弾こうとしている人が多い曲」の順位であって、「弾き終えて満足した人が多い曲」の順位ではない、という点はおさえておく必要があります。ランキングを候補リストとして使うぶんには有効ですが、最終決定の根拠にすると、後述する難易度のミスマッチが起こります。
| 順位 | 曲名 | ランキングでの表記 |
|---|---|---|
| 第1位 | 猫ふんじゃった | NYANGOアレンジ |
| 第2位 | どこまでも〜How Far I’ll Go〜 | Disney’s Moana |
| 第3位 | チャルダッシュ | Czardas |
| 第4位 | 名探偵コナン・メインテーマ | — |
| 第5位 | Be Our Guest | Disney’s Beauty and the Beast |
| 第6位 | it’s a small world | Disney |
| 第7位 | SUPERCALIFRAGILISTICEXPIALIDOCIOUS | Mary Poppins |
| 第8位 | Tico Tico | — |
| 第9位 | ルパン三世のテーマ’80 | — |
| 第10位 | いのちの歌 | Mariya Takeuchi |
出典:sound24 ピアノ連弾楽譜 月間販売ランキング(月次更新)
上位10曲のうち4曲が映画音楽という偏りが意味すること
表を眺めると、ジャンルの偏りが見えてきます。第2位・第5位・第6位にはDisney表記があり、第7位のメリー・ポピンズを含めれば、上位10曲のうち4曲が同系統の映画音楽です。サイト側もランキングのジャンル構成を「Disney、アニメ、クラシック、J-POP」と説明しており、クラシック専門の並びにはなっていません。
なぜ映画音楽が連弾で強いのか。理由は曲の作りにあります。映画音楽は主旋律がはっきりしていて、その下で伴奏が厚く鳴り続ける構造の曲が多い。これは高音部と低音部を2人で分担する連弾の形式と相性が良く、片方がメロディを歌わせ、もう片方が和音とベースで支える、という役割分担がそのまま成立します。逆に、旋律が2つ以上絡み合う対位法的な曲は、どちらのパートも主役になるため、合わせる難度が上がります。
「売れている」と「2人で弾きやすい」は別の物差し
ランキングを選曲の根拠にすると困るのは、順位に難易度の情報が含まれていない点です。第3位のチャルダッシュ(ハンガリー由来の舞曲として知られ、ヴァイオリン曲の編曲で親しまれています)は、速いパッセージが連続する曲想で、編曲によって要求される技術が大きく変わります。同じ曲名でも初級用の易しいアレンジから、原曲のテンポ感を再現する上級アレンジまで幅があるのが連弾楽譜の常です。
つまり、ランキングで確認できるのは「曲名」までで、「その楽譜が自分たちに合うか」は別途確認しないと分かりません。楽譜を選ぶときは、曲名の隣に書かれた難易度表記(初級・初中級・中級など)と、プリモ・セコンドそれぞれの難易度が別に書かれているかを見てください。連弾譜は2人のパートで難易度が異なることが珍しくないため、この2点を見落とすと、片方だけが練習に追われる状態になります。
第1位「猫ふんじゃった」が連弾で選ばれ続ける理由
第1位の猫ふんじゃったは、誰もが旋律を知っている曲です。ここに連弾としての強みがあります。旋律を知っている曲は、合わせがずれた瞬間に2人とも即座に気づけるからです。初めて誰かと合わせる場面では、この「ずれたことが分かる」という条件が、曲の難易度そのものより重要になります。知らない曲でずれると、どちらが走ったのか止まったのかの判断ができず、練習が進みません。
加えて、この曲は黒鍵を中心に手の形を固定したまま弾ける箇所が多く、編曲によっては同じパターンの反復で構成されます。反復が多い曲は譜読みの負担が軽く、その分を「相手の音を聴く」ことに回せます。連弾の入り口としては合理的な選択です。曲そのものの成り立ちについては、次の記事で原題と和声の仕組みを整理しています。

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連弾で人気が出る曲に共通する3つの条件
1台を2人で弾くと音域が一気に広がる
連弾の定義から確認しましょう。発表会の選曲情報サイトPianeysの解説では、連弾は「1台のピアノを2人以上で弾きます。2人での演奏を四手連弾、3人での演奏を六手連弾と呼びます。一般的には四手連弾が標準です」と説明されています。つまり連弾という言葉が指す標準形は、2人で4本の手を使う四手連弾です。
この形式の利点も同サイトが明確に書いています。連弾では「迫力もあり華やかで幅広い音域の曲が味わえます」。ソロでは両手の届く範囲に音域が制限されますが、連弾なら低音域から高音域までを同時に鳴らし続けられます。人気ランキングの上位に、オーケストラやバンドで演奏される曲の編曲が多く入るのは、この音域の広さがあるからです。原曲の厚みを1台で再現しやすい曲ほど、連弾用の編曲が作られやすく、結果として売れ筋になります。
知名度が高い曲は「合っているか」が耳で判断できる
2つ目の条件は知名度です。ランキング上位にアニメ作品やディズニー作品が並ぶのは、単に好きな人が多いからだけではありません。旋律とテンポの正解を2人とも知っている状態で練習を始められるからです。
連弾の練習では、楽譜どおりに弾けているかに加えて、2人のタイミングが揃っているかという別の判定が常に必要になります。知っている曲なら、耳に残っている原曲との差分でずれを検知できます。知らない曲の場合、録音や模範演奏を聴き込んで正解のイメージを作る工程が先に入るため、同じ難易度でも仕上がりまでの時間が延びます。発表会までの期間が決まっているなら、知名度は難易度と同じくらい重要な選定基準です。
プリモとセコンドで難易度に差をつけられる曲は組みやすい
3つ目は、パートごとに難易度の差をつけられる作りかどうかです。旋律が上のパートに集中している曲は、下のパートを和音とベースだけに整理できるため、実力差のあるペアでも組めます。反対に、両手の細かい動きが上下どちらのパートにも要求される曲は、2人とも同じ水準に到達していないと形になりません。
Pianeysが「初心者の方向けのピアノ楽譜では、教師がセコンドを弾くためにセコンドが難しくなっています」と書いているのは、この設計思想の表れです。学習者がプリモで旋律を弾き、指導者がセコンドで伴奏と全体の支えを担当する。この組み合わせを前提に作られた楽譜が、初級向けの連弾譜には多く存在します。ペアの構成が「大人同士で実力が近い」なのか「実力差がある」なのかを先に確認し、それに合う設計の楽譜を探すのが近道です。
よくある失敗が、ランキング上位から順に「これにしよう」と決めて楽譜を買い、開いてみたら片方のパートだけが手に余った、というケースです。原因は、ランキングに難易度の情報が含まれていないこと。対策は単純で、購入前に楽譜の商品ページで難易度表記を確認し、プリモ・セコンドそれぞれの音符の詰まり具合を試聴音源や譜例の紹介で確かめることです。曲名で決めず、版(アレンジ)で決めてください。同じ曲名でも初級版と上級版では別の曲といえるほど中身が違います。
プリモとセコンドの役割を知らないまま選曲すると噛み合わない

プリモは高音部、セコンドは低音部とペダル
連弾の2つのパートには、はっきりした分担があります。高音部を担当するのがプリモ、低音部を担当するのがセコンドです。そしてペダルの操作はセコンド側が担います。椅子に並んで座ったとき、右側がプリモ、左側がセコンドという配置になるため、ペダルに足が届くのは左側に座るセコンドだからです。
この「ペダルはセコンド」という決まりが、連弾の難しさの核心でもあります。プリモが旋律を歌わせるために踏んでほしいタイミングと、セコンドが自分の和音の変わり目で踏み替えたいタイミングは、いつも一致するとは限りません。プリモ側は自分でペダルを操作できないため、響きが濁ったと感じても手が出せない。ここで「ペダルを変えるのはどの小節のどの拍か」を2人で事前に決めておくかどうかで、仕上がりが変わります。
プリモ=連弾で高音部を担当するパート。楽譜では上段(または見開きの右ページ)に書かれ、旋律を受け持つことが多い。セコンド=低音部を担当するパートで、和音とベースに加えてペダル操作も担う。四手連弾=2人による連弾、六手連弾=3人による連弾を指し、一般に連弾といえば四手連弾を意味する。
「セコンドのほうが簡単」という思い込みは逆のことがある
ここが連弾で意外と知られていない点です。旋律を弾くプリモが主役で、伴奏のセコンドは easier だと考えられがちですが、Pianeysは「初心者の方向けのピアノ楽譜では、教師がセコンドを弾くためにセコンドが難しくなっていますが、特にプリモ・セコンドのどちらが簡単という訳ではありません」と明記しています。どちらが簡単かは曲と編曲によって変わる、というのが正確な理解です。
実際に起きる不具合は、実力差のあるペアが「上手なほうがプリモ、まだ弾けないほうがセコンド」と反射的に決めてしまう場面です。初級向けの編曲では、セコンドに指導者を想定した和声づけとペダル操作が書かれていることがあり、初心者がセコンドに入ると、ペダルと左手の跳躍という二重の負担を抱えます。パートを決める前に、両方の譜面を開いて音符の数と跳躍の幅を見比べてください。判断材料はそこにあります。
音量のバランスは「譲り合い」で作る
連弾がソロと決定的に違うのは、自分の音を全力で鳴らすと成立しない点です。同じ資料は「お互いに息を合わせることや、音量のバランスを考えて譲りあうことも大切です」と述べています。1台の楽器から出る音なので、2人が同時に強く弾けば、どちらの旋律も埋もれます。
具体的な作業としては、楽譜に書かれた強弱記号を「自分の記号」ではなく「その瞬間どちらが前に出るかの指示」として読み直すのが有効です。プリモにfが書かれ、セコンドにmfが書かれている箇所は、両方が実際に鳴らす音量というより、主役と脇役の入れ替わりを示しています。1つのフレーズごとに「ここは自分が前、次は相手が前」と鉛筆で書き込んでおくと、合わせの段階で迷いが消えます。
連弾で伸びるのは指よりも「相手の音を聴く耳」
連弾の学習効果は、テンポ感・リズム感・読譜力といった基本的な音楽力を系統的に育てる点にあります。ソロの練習では自分のテンポが基準になりますが、連弾では相手の刻みが基準になるため、「今、自分が走っているのか」を常時判定し続けることになります。この判定作業が、拍の感覚を鍛えます。
さらに、2人で1つの作品を仕上げる過程そのものに価値がある、というのが連弾を勧める側の共通見解です。同じ資料も「2人で1つの作品を仕上げる喜びや楽しさも体験できます」と書いています。1人で完結しない音楽をやると、止まったときに相手を待つ・置いていかれないよう合わせる、という判断が必要になり、アンサンブル全般に通じる感覚が身につきます。連弾の基本ルールは次の記事で詳しくまとめています。

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ピアノ連弾 人気ランキングを難易度6段階で並べ直す
連弾の難易度は6段階で整理されている
選曲の物差しとして使えるのが、Pianeysの連弾曲ページが採用している6段階の区分です。1級(初心者)、2級(初級)、3級(初級~初中級)、4級(初中級)、5級(初中級~中級)、6級(中級以上)という並びで、30曲以上の連弾曲がこの区分に沿って紹介され、ページは毎月更新されています。
この段階分けが役立つのは、「初級」と「中級」の間に3つの中間段階が置かれている点です。ピアノの難易度表記はサイトや出版社によって粒度がばらつきますが、初級と中級の間で立ち往生する学習者が多いという実態に対して、初中級の帯を厚く取った設計になっています。連弾は2人の水準を突き合わせる必要があるため、こうした細かい段階のほうが使い勝手が良くなります。
初心者から初級で名前が挙がる曲
同サイトが初心者向けとして挙げているのは、ギロックの「コサックダンス」、マーサ・ミアーの「タンポポのワルツ」、キャサリン・ロリンの「こわそうなワニ」です。いずれも教育用のピアノ曲を数多く書いた作曲家の作品で、最初から連弾として書かれている点が共通しています。
ここが重要な差です。ランキング上位に並ぶ曲の多くは、他の編成の曲を連弾用に編曲したものですが、最初から連弾として書かれた曲は、2人の手がぶつからない配置や、受け渡しのタイミングが作曲の段階で計算されています。初めて連弾を組むなら、編曲ものより連弾オリジナル曲のほうが破綻しにくい。続く初級~初中級の帯では、アラン・メンケンの「美女と野獣」、西澤健治の「さぁ!お出かけしましょ☆」が紹介されています。
初中級以上と中級以上で挙がる曲
初中級以上の帯には、アラン・メンケンの「ホール・ニュー・ワールド」や中川ひろたかの「にじ」が並びます。どちらも歌としての知名度が高く、旋律をどう歌わせるかが評価の中心になる曲です。音符の難易度だけを見れば手が届いても、テンポの揺らし方を2人で共有できていないと、旋律が途切れて聞こえます。
中級以上の帯では、ドビュッシーの「小舟にて」、ピアソラの「リベルタンゴ」、YOASOBIの「夜に駆ける」が挙げられています。この3曲は要求される技術の方向が異なり、小舟にては音色とペダルの繊細な制御、リベルタンゴはリズムの食い込みと拍の共有、夜に駆けるは速いテンポでの音数の処理が課題になります。同じ「中級以上」でも、2人のどちらに負荷がかかるかは曲によって変わるため、帯だけで判断せず、実際の譜面で確認してください。
| 難易度の帯 | 紹介されている曲 | 作曲者 | 選ぶときの見どころ |
|---|---|---|---|
| 初心者(1級) | コサックダンス/タンポポのワルツ/こわそうなワニ | ギロック/マーサ・ミアー/キャサリン・ロリン | 連弾オリジナル曲。手の交差や衝突が起きにくい |
| 初級~初中級(2〜3級) | 美女と野獣/さぁ!お出かけしましょ☆ | アラン・メンケン/西澤健治 | 旋律の知名度が高く、ずれに気づきやすい |
| 初中級以上(4〜5級) | ホール・ニュー・ワールド/にじ | アラン・メンケン/中川ひろたか | 歌の曲。テンポの揺れ方を2人で共有できるか |
| 中級以上(6級) | 小舟にて/リベルタンゴ/夜に駆ける | ドビュッシー/ピアソラ/YOASOBI | 音色・リズム・速度と、課題の方向がそれぞれ違う |
出典:Pianeys「連弾のおすすめ曲」の難易度区分と紹介曲をもとに当サイトで整理
ランキングと難易度表を重ねると候補が絞れる
ここまでの2つの表を重ねてみましょう。ランキング(売れている曲)は候補の母集団、難易度6段階は篩(ふるい)です。順番としては、まずランキングやおすすめ曲ページから弾きたい曲を5曲ほど拾い、次にそれぞれの楽譜がどの難易度帯の編曲かを商品ページで確認し、2人の現在地に合う帯のものだけを残します。残った中から、2人が同じくらい弾きたいと思える曲を選べば、練習が続きます。
逆の順番、つまり難易度から入ると候補が事務的になりすぎ、練習の動機が続かないことがあります。連弾は合わせの時間を確保しないと完成しないため、2人とも「この曲を弾きたい」と思えているかどうかが、実は難易度以上に効きます。楽譜そのものの選び方は次の記事で掘り下げています。

発表会とコンクールでは選曲の基準がまるごと変わる

コンペティションのデュオ部門は6グレードに分かれている
人前で弾く場が発表会ではなくコンクールになると、選曲の自由度は一気に下がります。ピティナ・ピアノコンペティションのデュオ部門の要項を見ると、2026年の区分は連弾初級A、連弾初級B、連弾初級C、連弾中級A、連弾中級B、連弾上級の6グレードです。各グレードに課題曲が定められており、自由曲だけで挑む形式ではありません。
この6段階という数え方は、先に見た難易度区分の6段階とは別物です。コンクール側の区分は「年齢」で線が引かれているのに対し、選曲サイトの区分は「技術の到達度」で引かれています。同じ6段階でも基準軸が違うので、混同しないでください。コンクールに出る場合は、まず自分たちがどのグレードに該当するかを年齢条件で確定させ、そのうえで課題曲リストの中から選ぶ、という順番になります。
| グレード区分 | 連弾初級A/初級B/初級C/中級A/中級B/上級の6段階 |
| 年齢条件の目安 | 初級A=両者小2以下/初級B=両者小4以下/初級C=両者小6以下/中級A=一人は中3以下/中級B=一人は高3以下/上級=一人は22歳以下 |
| 課題曲の数 | 初級A=課題曲5曲/初級B・C・中級A・B=予選4曲+本選4曲(共通課題付き)/上級=予選8曲+本選4曲 |
| 本選の形式 | 共通課題曲を1曲目として2曲演奏する |
出典:ピティナ・ピアノコンペティション デュオ部門 課題曲ページ(2026年)
年齢区分でペアの組み方が決まる
表のとおり、初級帯は「両者が○年生以下」という条件、中級以上は「一人は○年生以下」という条件になっています。この書き分けには意味があります。初級帯は同年代の子ども同士で組むことを前提にしており、中級以上は年齢の離れた組み合わせ、たとえば生徒と年長者のペアも想定できる形です。
選曲の前に確認すべきは、まずこの条件をペアが満たすかどうかです。片方の学年が上がったことで、昨年と同じグレードに出られなくなるケースは珍しくありません。グレードが変われば課題曲も変わるので、次年度の計画を立てるときは、先に年齢条件を確認してから曲探しに入ってください。コンクール全般の設計の違いは次の記事で比較しています。
予選と本選で必要になる曲数が違う
もう1つ実務的に効くのが曲数です。連弾初級Aは課題曲5曲という構成ですが、初級B以上は予選4曲・本選4曲という形で、予選と本選のそれぞれに課題曲リストが用意されています。さらに本選では共通課題曲を1曲目として2曲演奏する形式です。加えて、初級C以上では予選で演奏しなかった曲から別選択を求められる場合があるとされています。
これが意味するのは、本選に進む想定なら、予選用の曲だけを仕上げていては足りない可能性があるということです。予選の結果が出てから本選の曲を譜読みし始めると、合わせの時間が確保できません。コンクールを視野に入れるなら、予選用と本選用の両方を並行して進める前提でスケジュールを組むのが現実的です。
上級にはハンガリー舞曲からの選択肢がある
連弾上級のグレードでは、ブラームスのハンガリー舞曲から1曲を選択できるオプションが設けられています。ハンガリー舞曲はもともとピアノ連弾のための作品として知られる曲集で、管弦楽版で聴く機会が多い曲も、原曲は連弾用です。連弾の歴史的なレパートリーが、現在のコンクールの課題曲にも残っている形になります。
上級を目指す段階では、ポップスやアニメの編曲だけでなく、こうした連弾オリジナルのクラシック作品に触れておくと、2人で音楽を作る技術の幅が広がります。編曲ものでは学べない、作曲家が連弾という編成のために書いた書法――2人の手の受け渡し、低音と高音の呼応――がそこにあるからです。

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人気曲より先に教本で「合わせ方」を覚える方法もある
連弾専用の教本は1冊で25曲を扱う
いきなりランキング上位の曲に挑むのではなく、連弾の基礎を扱った教材から入る道もあります。ヤマハミュージックエンタテインメントの「ステップアップピアノ連弾」は、初級から中級を対象に第1巻・第2巻の構成で、全25曲のオリジナル曲を収載しています。編曲ものではなく、この教材のために書かれた曲で構成されている点が特徴です。
公式の説明によれば、この教材は江崎光世氏による長年のレッスン実証に基づいており、連弾を通じて「演奏を聴く耳や呼吸やフレーズ、バランス感覚」といった基本的な音楽力を系統的に育成する設計になっています。人気曲を1曲仕上げるだけでは身につきにくい、合わせの基本動作を順番に積む作りです。
1曲が8~12小節という長さの意味
この教材で注目したいのが曲の長さです。各曲は8~12小節と短く設計されています。短い曲が並ぶ教材は物足りなく見えるかもしれませんが、連弾の学習においてはこの短さが効きます。
理由は2つあります。1つは、プリモとセコンドを交代して弾く練習がしやすいこと。公式説明も、プリモとセコンドを交代しても負担が少ないと述べています。両方のパートを弾いてみると、相手が何に苦労しているかが分かり、譲り合いの感覚が育ちます。もう1つは、合わせの試行回数を稼げることです。長い曲を1回通すより、短い曲を何度も合わせるほうが、出だしの呼吸や終わりの揃え方といった「連弾の要所」を繰り返し練習できます。なお、数曲を組み合わせて発表会のプログラムとして活用することも可能とされています。
スコア譜形式と模範演奏CDで役割が見える
同教材のもう1つの特徴が楽譜の形式です。4手の役割が一目瞭然になるスコア譜形式が採用されており、全曲の模範演奏CDが付属し、巻末には各曲の学習ポイントが記載されています。
スコア譜形式というのは、プリモとセコンドの譜面が縦に並んで印刷され、同時に鳴る音が上下に揃って見える形です。通常の連弾譜は見開きの左右にセコンドとプリモが分かれて印刷されるため、自分のページからは相手の音符が見えません。スコア譜なら「この拍で相手は何を弾いているか」が目で追えるので、合わせの練習に入る前の準備がしやすくなります。相手の音が見える状態で譜読みする経験を一度しておくと、通常の連弾譜に戻ったときにも、相手の動きを想像しながら弾けるようになります。
2つ目の失敗は、各自がパートを完璧に仕上げてから合わせよう、と考えて合わせ練習を後回しにするパターンです。ソロの練習の延長で考えると自然な発想ですが、連弾ではこれが崩れる原因になります。1人で作り込んだテンポと呼吸は2人で違っていて当たり前で、合わせた瞬間に両方とも修正が必要になるからです。対策は、譜読みが6割程度の段階で一度合わせてしまい、ずれる箇所を早めに洗い出すこと。修正が必要な箇所を知ったうえで個人練習に戻るほうが、最終的な合わせの回数が減ります。
ペアのタイプと場面で変わる、連弾の選び方
親子や指導者とのペアで弾く場合
実力差が大きいペアでは、初級者向けに作られた連弾譜が第一候補になります。前述のとおり、この種の楽譜は指導者がセコンドを弾く前提で書かれていることが多く、学習者側のプリモは限られた音域と手の形で弾けるように配慮されています。学習者にとっては、自分が弾ける音数でも、下から厚い和音が支えられることで「曲になった」という手応えが得られる構造です。
注意点は、セコンド側の負担を見誤らないことです。保護者がセコンドを担当する場合、初級向けの楽譜であってもセコンドには跳躍やペダル操作が入ることがあります。子どものレベルだけを基準に楽譜を選ぶと、大人側が練習に追われる展開になります。購入前に両方のパートを確認するという手順は、どのペアでも共通です。
大人同士・友人同士で組む場合
実力が近い大人同士なら、プリモとセコンドを交代して両方を弾いてみる進め方が使えます。どちらのパートが自分に向くかは、旋律を歌わせるのが得意か、拍を刻んで支えるのが得意かで変わるからです。決め打ちせず両方を試してから分担すると、仕上がりが安定します。
選曲では、2人のスケジュールから逆算するのが現実的です。合わせの時間が週に一度しか取れないなら、各自の譜読みが軽い曲を選び、合わせの回数に時間を割り当てます。反対に、同居していて毎日合わせられる環境なら、譜読みに時間のかかる中級以上の曲も射程に入ります。難易度は技術だけでなく、確保できる合わせ時間との掛け算で決めてください。
季節の曲から入るという選択肢
連弾は季節ものとの相性が良い分野でもあります。全音楽譜出版社は「全音ピアノ連弾レパートリー」を中心に初級~中級の学習者向けの連弾譜を刊行しており、季節ごとの曲集も揃えています。クリスマス向けでは「王様のピアノ クリスマス[連弾]」が【初・中級】として案内されているほか、「ジャズアレンジで弾きたい クリスマス・ソング 第3版」のようなアレンジ系の曲集もあります。
季節の曲を選ぶ利点は、締切が自然に決まることです。「クリスマスまでに仕上げる」という期限があると、2人のスケジュール調整が進みます。連弾が続かない原因の多くは技術的な壁ではなく、合わせる日程が決まらないことなので、期限を外から与えてくれる季節ものは実用的です。クリスマス曲の難易度差については次の記事で整理しています。
楽譜はどこで手に入れるか
連弾譜の入手先は、出版社の公式ショップ、楽器店の楽譜売り場、そしてダウンロード販売のサイトに分かれます。紙の曲集は複数曲がまとまっているため1曲あたりの単価が下がりやすく、ダウンロード販売は1曲単位で買えるので、ランキング上位の曲を試したいときに向きます。今回のランキングを掲載しているsound24のようなサイトは、初級から上級まで難易度別に分類された楽譜を扱っており、難易度から探す使い方ができます。
なお、著作権のある楽譜はコピーして配ることができません。ペアの2人で1台のピアノを使う場合でも、パート譜が必要なら人数分の楽譜を正規に用意するのが原則です。出版社公式のショップや正規のダウンロード販売サイトから入手してください。

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まとめ:ランキングは候補集め、決定は難易度と役割分担で
連弾の選曲でつまずく人の多くは、曲を決める作業と、2人の役割を決める作業を同時に進めようとしています。この2つは分けたほうが早く進みます。まずランキングやおすすめ曲ページから弾きたい曲を数曲書き出し、それぞれの難易度帯を確認して候補を絞る。そのうえで楽譜を開き、プリモとセコンドの音符の数を見比べて分担を決める。この順番なら、買ったあとで手に余ることに気づく事態を避けられます。
最初の一歩としては、難易度の帯が明示されている曲集を1冊開き、短い曲を1曲だけ2人で合わせてみることをおすすめします。出だしの合図と終わりの止め方という、連弾で最初につまずく2点が、1曲で体験できるからです。
※本記事に記載した課題曲の構成・グレード区分・楽譜の情報は、記事作成時点で各公式サイトに掲載されていた内容に基づきます。ランキングは月次で更新され、コンクールの要項は年度ごとに変わるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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