電子ピアノを探し始めると、同じ「88鍵」「本格タッチ」と書かれた製品が数万円から数十万円まで並んでいて、どれを選べば後悔しないのか分からなくなります。レビューを読んでも「安くて十分」と「すぐ買い替えた」が混ざっていて、判断の軸が見えにくいジャンルです。
結論から言うと、買ってはいけない電子ピアノは「値段が安いもの」ではなく、練習の目的に対して楽器としての条件が欠けているものです。具体的には、鍵盤が88鍵に届かない、ハンマーアクションを搭載していない、3万円以下の無名メーカー品、生産終了した在庫品、ペダルやスピーカーが目的に足りない、の5つが代表的な落とし穴になります。
この記事では、なぜその条件が練習の妨げになるのかを、鍵盤の仕組み・メーカー公式スペック・価格帯ごとの傾向から説明します。特定の販売店をすすめる記事ではないので、読み終えたときに「自分の用途ならどこまで必要か」を自分で判断できるようにまとめました。
・買ってはいけない電子ピアノに共通する5つの条件
・61鍵・73鍵、軽すぎる鍵盤で練習が止まる理由
・3万円以下、13万円前後、ポータブル型の追加費用という価格の見方
・生産終了モデルの見分け方と、目的別の公式スペック比較
買ってはいけない電子ピアノに共通する5つの条件とは

線を引く基準は「ピアノの練習に使えるかどうか」
最初に押さえたいのは、電子ピアノの良し悪しを決める物差しは「音がきれいか」より「アコースティックピアノと同じ練習ができるか」だという点です。電子ピアノは鍵盤楽器であると同時に、多くの人にとってはピアノの代わりに毎日触る練習道具だからです。
ピアノ曲は88鍵のピアノで弾くことを前提に書かれており、鍵盤を押す重さや戻る速さで音の強弱をつけます。このどちらかが再現できない楽器では、楽譜どおりに弾けない、あるいは弾けても本物のピアノに移ったときに指が対応できない、という問題が起きます。
よくあるのは「子どもが始めるかどうか分からないから、とりあえず安いキーボードで」という判断です。鍵盤が軽いまま数か月練習すると、教室やレッスン先のアコースティックピアノで音が鳴らない、指が沈まないという違和感が出やすくなります。
見極めのコツは、カタログの音色数や内蔵曲の数を後回しにして、鍵盤数・鍵盤方式・ペダルの3点を最初に確認することです。ここが揃っていれば、残りは予算と置き場所の話になります。
88鍵・ハンマーアクション・大手メーカーの3条件が土台になる
失敗を避ける最短ルートは、88鍵+ハンマーアクション+大手メーカーの3条件を満たす中から、手が届く価格帯を選ぶことです。電子ピアノの比較サイトでも「88鍵+ハンマーアクション+大手メーカーの3条件を満たす中で、一番手が届く価格帯を選ぶのが失敗しないコツ」と整理されています。
理由は3つの条件がそれぞれ別の失敗を防ぐからです。88鍵は「弾けない曲」を、ハンマーアクションは「タッチの違和感」を、大手メーカーは「修理やサポートが受けられない」を防ぎます。ここで言う大手とは、ヤマハ・カワイ・ローランド・カシオ・コルグのように国内で修理窓口と後継モデルの情報を継続して出しているメーカーです。
つまずきやすいのは、3条件のうち2つだけ満たす製品です。たとえば88鍵でもハンマーアクションがない、ハンマーアクションをうたっていてもメーカーの情報がほとんど見つからない、というケースです。商品名に「ピアノ」と入っていても、鍵盤方式の記載がないものは仕様表を確認するまで候補に入れないほうが安全です。
3条件はあくまで最低ラインです。ここを通過した製品同士であれば、どれを選んでも「買ってはいけない」には当たりません。
本当の失敗は「安さ」ではなく「目的とのズレ」
見落とされがちですが、高価なモデルでも目的に合わなければ失敗になります。重要なのは「どちらが優れているか」ではなく「自分の目的や環境に合っているか」で、練習頻度・置き場所・予算・将来の目標を合わせて考える必要があります。
たとえば、集合住宅の2階以上で夜に練習したい人が、打鍵音や振動への対策を考えずに重い据え置き型を選ぶと、音量を下げても床に響く問題が残ります。逆に、年に数回コードを確認するだけの人が20万円以上の木製鍵盤モデルを買っても、湿度管理の手間が増えるだけかもしれません。
そこでこの記事では、5つの条件を「誰にとってもNG」ではなく「多くの人がやりがちなズレ」として扱います。自分がどの読者タイプに当てはまるかを考えながら読むと、次の見出し以降の判断が早くなります。
次に確認したいのは、いちばん取り返しがつきにくい鍵盤数の問題です。
避けたい5条件は「88鍵未満」「ハンマーアクションなし」「3万円以下の無名メーカー品」「生産終了の在庫品」「ペダルやスピーカーが目的に足りない」。まず88鍵・ハンマーアクション・大手メーカーの3条件で候補を絞り、残りは目的と置き場所で決めます。
61鍵・73鍵ではなぜ足りなくなるのか
88鍵は1890年代から続くピアノの標準サイズ
ピアノの鍵盤数は、1890年代に88鍵が標準として定着し、それ以降のピアノ曲の多くはこの音域を前提に書かれています。61鍵や73鍵の楽器は「ピアノの一部の音域を切り取ったもの」と考えると分かりやすいです。
鍵盤が少ないと困るのは、単に端の音が出ないからだけではありません。左手の低音で和音の土台を作り、右手の高音で旋律を歌わせる、というピアノ曲の基本構造そのものが崩れます。曲の途中で音域が足りなくなると、1オクターブ上げ下げして弾くことになり、和音の響きや指の移動距離が楽譜と変わってしまいます。
また、鍵盤数が少ない楽器は本体の幅も短くなるため、中央のドの位置がピアノと違って感じられます。88鍵のピアノに移ったとき、座る位置や腕を伸ばす距離の感覚がずれることがあります。
鍵盤数の歴史と選び方の基準は、次の記事で詳しくまとめています。

ピアノの前に座って、ふと鍵盤の端から端まで数えたことはありませんか。白鍵52本、黒鍵36本、合わせて88本。この数字は世界中どこのピアノでもほぼ同じです。ところ…
ラ・カンパネラは73鍵モデルでも弾き切れない
具体的な曲で見ると、差ははっきりします。61鍵盤の範囲を大きく逸脱するクラシック曲は珍しくなく、たとえばリストの「ラ・カンパネラ」は73鍵モデルでも弾き切ることができないと解説されています。
理由は、この曲が高音域の跳躍を連続させる書き方になっているからです。鍵盤の端近くまで音域を使う曲は、ロマン派以降のピアノ曲を中心に増えていきます。ピアノの鍵盤が88鍵に広がったことで、作曲家がその音域を使い切る曲を書くようになった、という順番で考えると納得しやすいはずです。
もちろん、入門の教本やポップスの簡単なアレンジなら61鍵で足りる曲もあります。ただし「ほとんどのピアノ曲は88鍵のピアノで演奏することを考えて作られているから、鍵盤数の少ない電子ピアノだと演奏できない曲が出てくる可能性が高い」という点は変わりません。
確認のコツは、弾きたい曲の楽譜で最低音と最高音を探し、候補の楽器の音域に入るかを見ることです。迷ったら基本は88鍵を選び、数年後にどんな曲を弾きたいかで判断します。
失敗パターン1:「最初は簡単な曲だけ」が半年で崩れる
鍵盤数でいちばん多い失敗は、購入時の予定と上達後の曲がずれるパターンです。「最初は簡単な曲しか弾かないから61鍵で十分」と考えて購入し、教本が進んだ段階で音域が足りなくなります。
原因は、練習曲の音域が進度に合わせて広がるように設計されていることです。初めは中央のドの周りだけで弾ける曲から始まり、ヘ音記号の低い音や加線の多い高音へと少しずつ範囲を広げていきます。入門期に足りていた鍵盤数が、そのまま次の段階でも足りるとは限りません。
対策は、購入時に「今弾きたい曲」ではなく「続けたら弾きたい曲」を1曲決めておくことです。その曲が88鍵の音域を使うなら、最初から88鍵を選ぶほうが買い替えの手間も費用もかかりません。
すでに61鍵を持っている場合も、すぐに処分する必要はありません。音域が足りない曲が出てきた時点を、買い替えを検討するサインとして扱えば十分です。
「今は簡単な曲だけ」という理由で61鍵・73鍵を選ぶと、教本が進んで音域が広がった段階で弾けない曲が出てきます。原因は練習曲が進度に合わせて音域を広げる設計になっていること。購入前に「続けたら弾きたい曲」を1曲決め、その最低音と最高音が収まるかを確認しましょう。
軽すぎる鍵盤・重すぎる鍵盤で起きること

ハンマーアクションは「押すと重く、離すと戻る」を再現する仕組み
鍵盤数の次に確認したいのが鍵盤方式です。電子ピアノ選びでは、鍵盤の数よりも上達を左右する「鍵盤のタッチ(重さ)」のほうが見落としやすい落とし穴だと指摘されています。
アコースティックピアノでは、鍵盤を押すと内部のハンマーが持ち上がって弦を叩きます。そのため指先には、ハンマーを動かす分の重さと、押し切ったあとに鍵盤が戻ってくる動きが伝わります。ハンマーアクション鍵盤は、この重さと戻りを電子ピアノの内部で再現するための構造です。
低価格のキーボードに多いバネ式の鍵盤は、押し始めから押し切るまでほぼ同じ軽さで沈みます。見た目は同じ白鍵と黒鍵でも、指にかかる負荷はまったく別物です。
仕様表では「ハンマーアクション」「ハンマーアクション付き」「エスケープメント付き」などの表記を探します。何も書かれていない場合は、鍵盤方式が非搭載である可能性を疑ってください。
ハンマーアクション=鍵盤を押したときの重さと戻りを、内部のハンマー状の部品で再現する鍵盤方式。
エスケープメント=グランドピアノの鍵盤をゆっくり押したときに感じる、わずかなクリック感を再現する機構。
木製鍵盤/樹脂鍵盤=鍵盤本体の素材。木製は自然な重さ、樹脂は軽さと手入れのしやすさが特徴。
軽すぎる鍵盤では「力を込めた練習」ができない
軽すぎる鍵盤の問題は、弾きやすさの裏返しとして現れます。鍵盤が軽すぎると音が鳴りづらく、力を込めて弾く練習ができないため、正しいピアノの演奏技術を身につける妨げになりかねません。
ピアノの強弱は、鍵盤を押す速さと重さの組み合わせでつけます。軽い鍵盤では、少し触れただけで音が鳴ってしまうため、pp(ピアニッシモ)からff(フォルティッシモ)までの幅を指でコントロールする感覚が育ちにくくなります。
典型的なのは、家では速く弾けていた曲が、レッスン先のピアノで途中から指が止まるパターンです。これは指が遅いのではなく、鍵盤を底まで押し切る力の配分を練習できていなかったことが原因です。
見極め方は、試弾のときに同じ音を「とても小さく」ではなく、段階を分けて小さい音・中くらいの音・大きい音の3通りで弾いてみることです。3段階がはっきり弾き分けられれば、強弱の練習には十分なタッチと考えられます。
重すぎる鍵盤も続かない原因になる
一方で「重ければ本格的」とも言い切れません。重すぎる鍵盤は初心者にとって弾きづらく、練習のモチベーション低下につながることがあります。
鍵盤の重さの感じ方は、手の大きさや指の筋力、これまでの経験で変わります。ブランクのある大人や小さな子どもの場合、店頭で「しっかりしている」と感じた鍵盤が、自宅で30分弾き続けると負担になることもあります。
メーカーによっては、タッチ感度を切り替えられるモデルもあります。たとえばヤマハP-225はタッチ感度をハード/ミディアム/ソフト/固定から選べる仕様です。ただしこれは「音の出方の反応」を変える機能で、鍵盤そのものの物理的な重さが変わるわけではない点に注意してください。
いちばん確実なのは、購入前に実際に試弾して、自分の手の感触や求める重さを確認することです。ネット購入を考えている場合も、同じ機種を一度は触っておくと後悔が減ります。
樹脂鍵盤と木製鍵盤は13万円前後から選択肢が変わる
鍵盤素材で迷ったら、「初めての1台・趣味として気軽に」なら樹脂、「本格的に練習したい・長く続けたい」なら木製、が大まかな目安です。
木製鍵盤は自然な重さを持ち、押すと重みを感じ、指を離すとゆっくり戻ってきます。これが繊細な強弱や表現につながります。ただし価格が高く(15万円以上)、湿度の影響を受けやすいため保管にも気を配る必要があります。樹脂鍵盤は軽めのタッチで手入れがしやすく、低価格帯のモデルに多く採用されていますが、表現の幅が物足りなく感じることがあります。
価格の傾向で見ると、電子ピアノはおおよそ13万円前後を境に、高価になるほどアコースティックピアノに近づき、安価になるほど妥協点が増えていくと解説されています。木製鍵盤の選択肢が入り始めるのもこの価格帯です。
木製と樹脂のタッチの違いは、次の記事で構造から整理しています。

3万円以下・無名メーカーを避けたほうがいい理由
3万円以下は「5年程度」で寿命を迎えやすい
価格で最も警戒したいのは3万円以下の電子ピアノです。電子ピアノの比較サイトでは、安価なモデル(3万円以下)は長くても5年程度で寿命を迎えることが多いと解説されています。
理由は、コストを抑えるために鍵盤の機構・スピーカー・電子回路の部品が簡素になりやすいからです。鍵盤の一部だけ音が出にくくなる、ペダルの反応が不安定になる、といった不具合が出たときに、無名メーカーの製品では修理窓口や部品の供給が見つからないこともあります。
これに対して、10万円以上の電子ピアノは10~15年使い続けられると言われており、長い目で見ればコストパフォーマンスが高くなると整理されています。購入時の金額だけでなく、何年使うかまで含めて比べるのがポイントです。
チェック方法は、メーカー名で検索して公式サイト・国内の修理受付・後継モデルの情報が見つかるかを確認することです。3つとも見つからない製品は、価格にかかわらず候補から外すのが無難です。
価格帯ごとに「何を妥協しているか」が変わる
価格帯は「高いほど良い」ではなく、「それぞれの帯で何を削っているか」で読むと判断しやすくなります。初心者なら「88鍵」「ハンマーアクション鍵盤」「ヘッドホン対応」「予算5~10万円前後」を目安に選ぶのがおすすめ、というのが多くの解説で共通する基準です。
5万円~10万円の帯では据え置き型の選択肢が増え、スピーカー品質・鍵盤・ペダル性能が大きく向上します。10万円~13万円は妥協点が多い帯とされ、13万円~15万円が分岐点、15万円~20万円では4~6つのスピーカーを搭載したモデルが増え、20万円以上で本格的な木製鍵盤やプロ向け機能が揃ってきます。
ここで注意したいのは、同じ価格帯でも「音色数が多い代わりに鍵盤が簡素」「鍵盤は良いがスピーカーが小さい」のように、削る場所が製品ごとに違うことです。価格帯だけで決めると、自分にとって大事な部分が削られていることに気づきません。
下の表で、帯ごとの傾向を確認してから候補を絞ってください。
| 価格帯 | 傾向 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 3万円以下 | 長くても5年程度で寿命を迎えることが多い | ピアノの練習用には避けたい |
| 5万円~10万円 | 据え置き型の選択肢が増え、スピーカー・鍵盤・ペダルが向上 | 初めての1台の目安 |
| 10万円~13万円 | 妥協点が多い帯。13万円を境に品質が変わる | 何を削っているか仕様表で確認できる人 |
| 13万円~15万円 | 分岐点。木製鍵盤の選択肢が入り始める | 本格的に続けるつもりの人 |
| 15万円~20万円 | 4~6つのスピーカー搭載 | 中級~上級者 |
| 20万円以上 | 本格的な木製鍵盤、複数音源、プロ向け機能 | 表現の幅を求める人 |

ポータブル型は1.5~2.5万円の追加費用を見込む
「本体価格が安い」と感じたポータブル型は、周辺機材まで含めて比べる必要があります。ポータブルの場合、スタンド(1万円前後)と3本ペダルユニット(5千~1万円)で1.5~2.5万円が追加でかかる、と解説されています。
ポータブル型の多くは、本体に付属するのが簡易的なペダル1本だけで、スタンドも別売りです。机の上に置いて弾くと、鍵盤の高さと椅子の高さが合わず、手首が下がった状態で練習することになります。この姿勢は脱力のしにくさにつながります。
たとえばローランドFP-30Xも、スタンド(KSC-70)と3本ペダル(KPD-70)を組み合わせる前提の構成です。本体を単体で見たときの価格と、据え置き型に近い環境を作ったときの総額は別物だと考えてください。
比較のコツは、候補ごとに「本体+スタンド+ペダル+椅子」の合計で表を作ることです。据え置き型との差が思ったより小さくなることもあります。
実は「安く買う」近道は安いモデルを選ぶことではない
意外と知られていないのが、初期費用を抑えたい人ほど価格の低いモデルを避けたほうがよい、という逆説です。3万円以下のモデルは5年程度、10万円以上のモデルは10~15年使えると言われており、使える年数に大きな開きがあるからです。
短期間で寿命が来ると、そのたびに買い替えと処分の手間が発生します。子どもの場合は、上達して鍵盤の物足りなさを感じる時期と、楽器の寿命が重なることもあります。結果として、最初から条件を満たす1台を選んだ場合より、合計の負担が大きくなりがちです。
もうひとつの逆説は、「安いから試しに」という判断が、続けるかどうかの見極めを難しくすることです。軽い鍵盤で弾きにくさを感じてやめた場合、それが本人の向き不向きなのか、楽器の問題なのか区別できません。
予算が限られているなら、価格の低い製品に下げるより、3条件を満たすモデルの中で機能を絞る方向で調整するのがおすすめです。音色数や録音機能は、練習の質にはほとんど影響しません。
生産終了した在庫品はどうやって見分ける?
ヤマハP-115・P-125は生産終了モデル
型番が似ている電子ピアノは、生産終了した旧モデルが在庫品として販売されていることがあります。ヤマハのPシリーズでは、P-115が生産終了(P-145/P-225に統合)、P-125/P-125aも生産終了でP-225に置き換わっています。
生産終了品を避けたい理由は、価格が下がっていても中身が一世代前のスペックだからです。現行のP-225はCFXサンプリング音源と192音の最大同時発音数を持ち、新開発のGHC鍵盤を搭載しています。旧モデルとは鍵盤や音源の世代が異なります。
また、生産終了からの年数が経つほど、修理部品の確保や後継モデルとの互換性で不利になります。「現行モデルより安い」と感じたときは、まず型番が現行ラインナップに載っているかを確かめてください。
なお、ヤマハは2026年9月1日からPシリーズの価格を改定しています。価格の比較をするときは、改定前の情報が残っていないかにも注意が必要です。
カワイCN29・コルグB2も後継モデルに移っている
ヤマハ以外でも、代替わりしているモデルは少なくありません。カワイCN29は生産が完了してから年数が経っており、後継モデルとしてCN201やCXシリーズが販売されています。現在は在庫品か中古でしか入手できません。
コルグB2についても、後継機種のB2+に置き換わっていることがコルグの公式ページで案内されています。代替わりから日が浅いモデルは、販売店に在庫が残っている可能性が高く、型番の末尾の違いに気づかないまま購入する人が出やすい時期です。
生産終了品がすべて悪いわけではなく、状態や価格によっては選択肢になり得ます。ただし「生産終了であることを知ったうえで選ぶ」のと「知らずに買う」のでは、納得感が大きく変わります。
中古で検討する場合の内部チェックの考え方は、アコースティックピアノ向けですが次の記事も参考になります。

「同じヤマハのアップライトなのに、中古と新品で価格帯が倍近く違う。この差は一体どこから来ているんだろう」——中古ピアノを検討し始めた人が最初にぶつかるのが、この…
失敗パターン2:型番の末尾1文字を見落とす
生産終了品で起きやすい失敗は、「P-125」と「P-225」、「B2」と「B2+」のように、数字や記号が1つ違うだけの型番を同じモデルだと思い込むパターンです。価格の安い方を選んだら、実は一世代前だった、という形で起こります。
原因は、販売ページのタイトルがシリーズ名中心で書かれていて、型番が目立たないことにあります。さらに比較サイトやレビュー記事の更新が止まっていると、旧モデルが「おすすめ」のまま残っていることもあります。
対策は、購入前に次の3ステップを踏むことです。メーカー公式の現行ラインナップに型番があるかを確認し、「生産終了」「廃番」「在庫限り」の表記がないかを販売ページで探し、最後に後継モデルとの違いを公式の仕様表で比べます。
このひと手間で、「知らずに旧モデルを買う」リスクはほぼなくなります。
ペダルとスピーカーはどこまで気にすればいい?
本格的に弾くならダンパーペダルとハーフペダル対応を確認
鍵盤が合格でも、ペダルが簡素だと曲の表現に限界が出ます。ダンパーペダルは音を響かせるペダルで、本格的な演奏を目指すなら3本ペダル付きのモデルがおすすめとされています。
ダンパーペダルは、踏んでいる間は鍵盤から指を離しても音が伸び続ける仕組みです。クラシックでもポップスでも、和音をつなげて響かせる場面で頻繁に使います。さらに「ハーフペダル」機能に対応していると、ペダルの踏み込み具合を細かく調整して、音の伸び方をコントロールできます。
ハーフペダル非対応のペダルは、踏んでいるか離しているかの2段階しかありません。響きを少しだけ残す、濁らない程度に伸ばす、といった練習ができず、アコースティックピアノに移ったときに踏み方の加減が分からなくなりがちです。
確認のコツは、仕様表で「ハーフペダル対応」の表記を探すことです。付属ペダルと別売りのペダルユニットで対応が異なる場合もあるので、組み合わせまで見てください。ペダルの踏み方の基本は次の記事で解説しています。

ペダルを踏んだ瞬間、それまで整っていた音が急に濁って聞こえる。逆に、濁らせないようにと気をつけて踏むと、今度は音がブツブツ途切れてつながらない。独学でピアノを弾…
ペダルが「ずれる」だけで練習は止まる
見落としがちなのが、ペダルの重みと滑り止めです。ペダルを選ぶときは、踏んだときの重みや滑り止めの有無が重要なチェックポイントで、裏面にラバーが付いているタイプは演奏中にペダルがずれるのを防ぎます。
ポータブル型に付属する小型のペダルは軽く、フローリングの上で踏むと少しずつ前へ滑っていきます。曲の途中で足を伸ばしてペダルを探すことになり、そのたびに演奏が止まります。これは技術の問題ではなく道具の問題です。
また、踏みごたえが軽すぎるペダルは、足の力加減で響きを調整する練習に向きません。本物のピアノのペダルには一定の重さがあるため、軽いペダルに慣れると踏み込みすぎる癖がつくこともあります。
対策としては、据え置き型なら本体一体の3本ペダルを、ポータブル型なら専用の3本ペダルユニットを選ぶのが基本です。すでに単体ペダルを使っている場合は、ラバー付きか確認し、ずれるようなら敷物を工夫するだけでも改善します。
スピーカーは10万円以下では2つが中心
スピーカーの数は、音の広がりと聞こえ方に影響します。10万円以下のモデルはほとんどが2つのスピーカー構成で、15~20万で4~6つのスピーカーが付いており、4つ以上のスピーカーが付いた電子ピアノがおすすめと解説されています。
理由は、ピアノの音が低音から高音まで広い音域を持つからです。スピーカーが少ないと、低音の厚みや高音の伸びを1組のスピーカーで担うことになり、音量を上げたときにこもって聞こえることがあります。
ただし、ヘッドホン中心で練習する人にとって、スピーカー数の優先度は下がります。夜間や集合住宅での練習が中心なら、スピーカーより鍵盤とペダルに予算を回すほうが練習の質に直結します。
判断の目安は、スピーカーで弾く時間が1日の練習の半分を超えるかどうかです。超えるなら4つ以上を検討し、ヘッドホンが中心なら2つでも「買ってはいけない」には当たりません。
最大同時発音数は64音と192音で差が出る
カタログで「最大同時発音数」という数値を見かけたら、ペダルを多用する曲を弾くかどうかで重視度を決めます。同じヤマハPシリーズでも、P-145は64音、P-225は192音と差があります。
最大同時発音数とは、同時に鳴らせる音の数の上限です。ダンパーペダルを踏んだまま速いパッセージを弾くと、前の音が伸びたまま新しい音が次々に重なります。上限に達すると、古い音から順に消えてしまい、響きが途切れたように聞こえます。
簡単な曲や、ペダルをあまり使わない練習なら64音でも困る場面は多くありません。一方で、アルペジオを伴うロマン派の曲や、響きを重ねる曲を弾きたい人は、192音や256音のモデルを選ぶと安心です。
チェックするときは、音色を重ねる機能(レイヤー)を使うと実際に使える発音数が減る点にも注意してください。ピアノ単音色で弾くことが多いなら、数値そのものを基準にして大丈夫です。
目的別に「選んでいい電子ピアノ」を公式スペックで比べる
ピアノと音楽の教科書調べ:現行5機種のスペック比較
ここまでの条件を満たす現行モデルを、メーカー公式の製品ページで確認できるスペックで並べました。いずれも88鍵・大手メーカー・現行販売中のモデルです。
比べてみると、同じ「88鍵のハンマーアクション系鍵盤」でも、樹脂系か木製・ハイブリッドか、同時発音数が192音か256音か、といった点で性格が分かれます。価格の高いモデルほど鍵盤の素材とスピーカー出力が強化される傾向は、ここでも共通しています。
注意したいのは、この表が「どれが上か」を決めるためのものではない点です。重量が11.5kgのP-225と22.0kgのP-525では、持ち運びや設置の自由度がまったく違います。奥行き232mmのPX-S3100は、狭い部屋に置けることそのものが強みです。
各製品の詳細は、ヤマハ P-225公式ページ、ヤマハ P-525公式ページ、ローランド FP-30X公式ページ、ローランド FP-90X公式ページ、カシオ PX-S3100公式ページで確認できます。
| 機種 | 鍵盤 | 最大同時発音数 | 特徴的なスペック |
|---|---|---|---|
| ヤマハ P-225 | GHC鍵盤(88鍵) | 192音 | CFXサンプリング/重量11.5kg |
| ヤマハ P-525 | グランドタッチ-エス木製鍵盤(88鍵) | 256音 | Pシリーズ最上位/重量22.0kg |
| ローランド FP-30X | PHA-4スタンダード鍵盤(88鍵) | 256音 | アンプ出力11W×2/重量14.8kg(スタンドなし) |
| ローランド FP-90X | PHA-50鍵盤・木材×樹脂ハイブリッド(88鍵) | ピアノで無制限(その他音色は256) | 定格出力25W×2+ドーム・ツイーター |
| カシオ PX-S3100 | ハンマーアクション付き(88鍵) | — | 奥行き232mm/音色700種類以上 |
初めての1台・趣味で続けたい人は「3条件+試弾」で十分
初めての1台で、まずは続けられるかを見たい人は、88鍵・ハンマーアクション・大手メーカーの3条件を満たすポータブル型や入門の据え置き型から選べば、「買ってはいけない」には当たりません。予算の目安は5~10万円前後です。
この層で比べやすいのが、ヤマハP-225、ローランドFP-30X、カシオPX-S3100です。P-225は4つ構成の2ウェイスピーカー、FP-30Xは256音の同時発音数とBluetooth接続、PX-S3100は奥行き232mmの薄さと3トラック録音、と得意分野が違います。
ここでのつまずきは、機能表の数字だけで決めてしまうことです。たとえばPX-S3100の700種類以上の音色は、ポップスやアレンジを楽しみたい人には魅力ですが、クラシックの練習が中心なら判断材料としての比重は小さくなります。
決め手にしたいのは試弾したときの鍵盤の感触と、スタンド・3本ペダルを含めた総額です。この2点で候補を2機種まで絞り、最後に置き場所で決めると迷いが少なくなります。
長く本格的に続けたい人は13万円前後の境目を越えるか考える
レッスンに通っている、アコースティックピアノへの移行も視野に入れている、という人は、13万円前後の境目を越える価格帯まで検討する価値があります。木製鍵盤の選択肢が入り、表現の幅が広がるからです。
この層の代表がヤマハP-525とローランドFP-90Xです。P-525はグランドタッチ-エス木製鍵盤と256音、FP-90Xは木材と樹脂のハイブリッド構造のPHA-50鍵盤と、ピアノ音色での無制限の同時発音数を備えています。強弱のつけ方やペダルの響きを細かく練習したい人に向いた設計です。
デメリットも正直に挙げると、木製鍵盤は湿度の影響を受けやすく、置き場所の環境管理が必要です。重量も増えるため、ポータブル型であっても頻繁な移動には向きません。
「いつか本格的に」という段階なら、最初からここを目指さなくても大丈夫です。3条件を満たすモデルで練習を始め、表現の物足りなさを感じた時点で買い替えを考えるのも合理的な順番です。
マンション・集合住宅では「音量」より振動を先に考える
集合住宅で使う人は、電子ピアノの機種選びと同じくらい設置方法が重要です。音量はヘッドホンで下げられますが、打鍵音やペダルの振動音は床や壁を伝わって、集合住宅で騒音問題になることがあるからです。
対策の基本は2つです。1つは防音カーペットで、音を吸収し反響を減らす効果があり、電子ピアノの下や部屋に敷くことで騒音を軽減できます。もう1つは設置位置で、壁にぴったり付けず少し離して置くと、打鍵音などの振動が壁に直接伝わるのを抑えられます。
見落としやすいのが契約の確認です。騒音について法律で定められた絶対的なデシベル基準はなく、判断は住まいのルールに左右されます。賃貸で契約書に「楽器使用不可」と明記されている場合、電子ピアノでも禁止される可能性があります。
購入前に契約書や管理規約を確認し、そのうえで床の対策から始めるのがおすすめです。管理規約の読み方は次の記事で整理しています。

マンションで楽器を弾きたいと考えたとき、最初に調べるべきなのは防音グッズの通販ページでも電子ピアノの機種名でもありません。手元にある管理規約です。楽器演奏が禁止…
まとめ|買ってはいけない電子ピアノを避ける考え方
買ってはいけない電子ピアノは、値段ではなく「練習の目的に対して何が欠けているか」で決まります。88鍵・ハンマーアクション・大手メーカーの3条件を最低ラインにし、そのうえで生産終了品を避け、ペダルとスピーカーを使い方に合わせて選べば、大きく外すことはありません。価格帯は13万円前後が一つの境目で、ポータブル型ならスタンドと3本ペダルの追加費用まで含めて比べるのが基本です。
最初の一歩として、弾きたい曲を1曲決めて、その楽譜の最低音と最高音を確認してみてください。そこから必要な鍵盤数と価格帯が見え、候補を2機種まで絞ったら販売店で試弾する、という順番で進めると後悔が減ります。
※価格・ラインナップは変更されることがあります。最新情報は各メーカーの公式サイトでご確認ください。

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