ピアノ教本難易度表は3つの物差しで読む|ヤマハとカワイの級の違いと教本4冊の役割

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「バイエルの次はブルグミュラー?それともツェルニー?」「このサイトの難易度表ではバイエル修了がグレード10級相当なのに、別のサイトでは違う」。ピアノの教本を調べ始めると、似たような表がいくつも出てきて、どれを信じればよいのか迷ってしまいます。

先に結論をお伝えすると、ネット上の「ピアノ教本難易度表」の多くは、出版社の説明文・グレード試験の級区分・コンクールやステップのレベルという、もともと別々に作られた3つの物差しを1枚に並べたものです。3つを結ぶ公式の対応表はないので、表ごとに数字がずれるのは当然なんですね。

この記事では、定番教本が「何を練習するための本なのか」を出版社の公式説明から整理し、ヤマハ・カワイのグレードやピティナ・ステップの段階が本来どう作られているのかを、各主催者の公式ページをもとに解説します。そのうえで、独学の大人や保護者が教本の順番を自分で決めるための判断軸を示します。

💡 この記事でわかること

・難易度表がサイトごとに食い違う構造上の理由
・バイエル/ブルグミュラー/ツェルニー30番/ハノンの役割の違い
・ヤマハグレード、カワイグレード、ピティナ・ステップの段階の作られ方
・独学や子どもの教本選びで「順番」を決める判断軸

目次

ピアノ教本難易度表がサイトごとに違うのはなぜ?

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難易度表は「3種類の物差し」を1枚に混ぜている

難易度表の数字が一致しないのは、そもそも共通の基準で作られていないからです。よく見かける表は、教本名の横に「初級」「グレード○級」「ステップ○○」などを並べていますが、それぞれ作った団体も目的も違います。

理由を分解すると、1つ目の物差しは出版社が教本に付けている説明文で、「どの本の次に使うか」という順番を示します。2つ目はヤマハやカワイのグレード試験で、これは受験者の到達度を測る仕組みです。3つ目はピティナ・ピアノステップのレベルで、ステージで演奏する課題曲の段階を示します。どれも「難しさ」に関係しますが、測っているものが違うため、横に並べた瞬間に作り手の解釈が入ります。

独学でありがちなのは、ある表で「ツェルニー30番=グレード8級程度」と書かれていたのを見て、30番を終えたら8級に合格できると考えてしまうケースです。グレード試験には初見や聴奏など教本では練習しない課題も含まれるので、教本の進度だけでは判断できません。

難易度表を見るときは、まず「この表は何を根拠にしているか」を確認しましょう。出典が書かれていない対応関係は、あくまで作成者の目安として受け取るのが安全です。

📖 用語チェック

教則本(教本)=演奏技術を段階的に身につけるために、易しい曲から順に並べた曲集。
練習曲(エチュード)=特定の技術(音階、分散和音、指の独立など)を集中的に練習するために書かれた曲。
グレード=楽器店系の団体が実施する音楽能力の検定制度。級の数字が小さいほど上位になる。

出版社の説明文が教えてくれるのは「難しさ」より「順番」

出版社の公式説明を読むと、多くの場合「初級」「中級」といった絶対的な難しさより、前後にどの教本を使うかが書かれています。教本はシリーズで使われることを前提に作られているからです。

たとえば全音楽譜出版社の「ツェルニー:30番練習曲」の商品ページには、「バイエル教則本の次に必ず使用されるこの曲集は、演奏の際に必要な諸技巧を完全に習得する事と、音楽のメカニズムを学習することを目標としたもの」と説明されています(全音楽譜出版社 商品ページ)。ここで示されているのは「バイエルの次」という位置と、「諸技巧」「音楽のメカニズム」という目的です。一方で、同じページに難易度の等級表記は記載されていません。

つまずきやすいのは、「次に必ず使用される」という表現を「バイエルを終えないと30番は使えない」と狭く読んでしまうことです。これは標準的な順番を示した説明で、他の教本から移ってくる人を排除する意味ではありません。

出版社の説明文は、教本の「目的」と「前後関係」を知る資料として使いましょう。自分の進度に合うかどうかは、次の章で扱う中身の違いで判断します。

グレード試験とステップは「到達度」と「ステージ」の物差し

グレード試験やステップの段階は、教本ではなく演奏する人の力や演奏する曲に付けられた区分です。そのため教本名との1対1対応は公式には用意されていません。

ヤマハグレードは公式ページで、ピアノ演奏グレードを13~11級(鍵盤初期学習者の方)、10~6級(学習者の方)、5~3級(音楽の指導者・専門家や、それらを目指す方)、2級(演奏家や、演奏家を目指す方)と対象ごとに分けています(ヤマハ音楽振興会 ヤマハグレード)。つまり級の区切りは「誰のための試験か」で決まっているわけです。ピティナ・ピアノステップは23段階のレベルを設けています。

よくある誤解は、「5級以上は指導者向け」という区分を知らずに、教本の進度が上がれば自然に3級・2級へ進むものだと考えることです。上位級は対象者の想定そのものが変わるので、学習者の延長線上にある目標とは性格が違います。

難易度表でグレードの数字を見かけたら、その級がどの対象者向けの区分に入っているかを公式ページで確認しておくと、数字の意味を読み違えずに済みます。

バイエルからツェルニーまで、定番4冊は何を練習する本なのか

バイエル:最初の1冊として作られた教則本

バイエルは、ドイツの作曲家フェルディナント・バイヤー(Ferdinand Beyer)による、ピアノを初めて学ぶ人のための教則本です。役割は「鍵盤と楽譜の基本を順番に積み上げること」にあります。

なぜ最初の1冊に向くのかというと、ごく狭い音域・単純なリズムから始まり、少しずつ音域と両手の組み合わせを広げていく構成になっているからです。1曲ごとに新しい要素が1つか2つずつ加わるので、読譜と指の動きを同時に覚えやすいんですね。

独学の大人がつまずきやすいのは、前半の単調な曲を「簡単すぎる」と飛ばし、後半の両手が独立して動く曲で急に止まってしまうパターンです。前半で身につけるはずだった「音符を見てすぐ指が動く」反応が不足しているのが原因です。

見極めの目安は、1曲を初めて見たときに、片手ずつならテンポを落とせば止まらずに読めるかどうか。これができていれば、前半を細かく繰り返す必要はありません。子ども向けには「こどものバイエル」のような導入教本もあり、カワイピアノグレードテストの区分A・Bでも教本例として挙げられています。

ブルグミュラー25の練習曲:表現を学ぶための曲集

ブルグミュラー(Friedrich Burgmüller)の「25の練習曲」は、25曲それぞれにタイトルが付いた曲集で、技術と同時に音楽的な表現を学ぶことを目的にしています。

理由は構成にあります。バイエルが「技術を順番に積み上げる」本だとすると、ブルグミュラーは1曲ごとに曲想が違い、強弱・スラー・スタッカート・テンポの変化を「曲の雰囲気を出すため」に使う練習になります。記号を守るだけでなく、なぜその記号が付いているのかを考える段階に入るわけです。

よくある失敗は、音を並べることに集中して、強弱記号を後回しにしてしまうこと。ブルグミュラーでは強弱や表情記号が曲の中心なので、後回しにすると「弾けたのに曲に聞こえない」状態になります。

練習では、譜読みの段階から強弱記号を一緒に読むのがコツです。ブルグミュラーの曲集ごとの難易度区分は、別記事で詳しく整理しています。

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ツェルニー30番練習曲(Op.849):技巧を最短距離で身につける本

ツェルニー(Carl Czerny)の「30番練習曲」は作品番号Op.849の練習曲集で、全音楽譜出版社は「演奏の際に必要な諸技巧を完全に習得する事」と「音楽のメカニズムを学習すること」を目標とし、「技術的に最短距離をとれるようになっています」と説明しています。全音版の価格は税込1,100円です。

「最短距離」と言える理由は、1曲ごとに練習する技術が絞り込まれているからです。音階の連続、分散和音、同じ音型の反復などが1曲の中で繰り返し現れるため、苦手な動きを集中的に練習できます。

つまずきやすいのは、楽譜に書かれた速度記号をいきなり目標にしてしまうこと。速い音型を最初から速く弾こうとすると、手首や腕に力が入り、指が回らない原因になります。指が回らない原因は、運指・脱力・テンポ設定のいずれかにあることがほとんどです。

練習の目安は、ゆっくりのテンポで運指を固定し、音の粒がそろってから少しずつ速度を上げること。なお、ツェルニーには40番など続編にあたる練習曲集もあります。

ハノン:他の教本と並行して使う補助教材

ハノン(Charles-Louis Hanon)の練習曲集は60曲からなり、指の独立性と均等性を養うための補助教材として使われます。他の3冊と違い、「この本の次に進む」というより「並行して毎日少しずつ使う」タイプの本です。

ハノンは同じ音型を1オクターブずつずらしながら上下する構成が中心で、曲というより指の体操に近い内容です。音楽的な変化が少ないぶん、指の動きそのものに注意を向けられます。

ここで起きやすい失敗は、ハノンだけを長時間続けて、曲の練習時間が削られてしまうこと。指の動きは曲の中で使えて初めて意味があるので、補助教材が主役になると、上達を実感しにくくなります。また、同じ動きを力任せに長時間繰り返すのは、手や腕への負担にもつながります。

使い方の目安は、練習の最初の数分に取り入れ、残りの時間を教本や曲に使うこと。痛みや違和感が続く場合は練習を中断し、医療機関に相談してください。

📊 定番4冊の役割の違い(ピアノと音楽の教科書調べ)
教本 主な役割 構成 使い方の位置づけ
バイエル 鍵盤と読譜の基本を積み上げる 易しい曲から順に並ぶ教則本 最初の1冊
ブルグミュラー25の練習曲 音楽的表現と技巧 標題付きの25曲 バイエルの次段階
ツェルニー30番(Op.849) 演奏に必要な諸技巧 技術を絞った30曲 バイエルの次に使う(全音の説明)
ハノン 指の独立性と均等性 音型を移動させる60曲 他の教本と並行する補助教材

ヤマハとカワイのグレードは何級からどう分かれている?

ヤマハとカワイのグレードは何級からどう分かれている?の解説画像

ヤマハグレードは「対象者」で4つの帯に分かれる

ヤマハグレードのピアノ演奏グレードは、公式ページで13~11級・10~6級・5~3級・2級の4つの帯に分けて案内されています。級の数字が小さくなるほど上位です。

この分け方の理屈は、帯ごとに受験者の想定が違うことにあります。13~11級は「鍵盤初期学習者の方」、10~6級は「学習者の方」、5~3級は「音楽の指導者・専門家や、それらを目指す方」、2級は「演奏家や、演奏家を目指す方」が対象です。学習者が段階的に目指すのは主に13~6級で、5級から上は指導や演奏を仕事にする人の力を測る設計になっています。

難易度表でありがちな読み違いは、「ツェルニー40番程度=5級」のような対応を見て、教本を進めれば5級に届くと考えることです。5~3級が指導者・専門家向けと明示されている以上、演奏技術だけでなく、指導に必要な総合的な音楽力が問われる区分だと考えるのが自然です。

受験を考えるなら、まず自分がどの帯の対象者に当たるかを確認し、試験内容は受験要項で確かめましょう。なお、ヤマハには入門~ディプロマまで20段階のピアノコンサートグレードという、演奏に特化した別の制度もあります。

カワイグレードは16~7級を「学習初期・中期・後期」で区切る

カワイピアノグレードテストは、生徒向けの16~7級と、6~1級に分かれています。生徒向けの級について、カワイは学習段階の意味を公式に説明している点が特徴です。

公式ページによると、15級~13級は学習初期(ピアノを弾くことへの興味・関心が育つ)、12~10級は学習中期(ピアノ学習の基本を習得)、9~7級は学習後期(音楽表現や演奏技術の獲得)と位置づけられています。評価の観点も段階で変わり、初期は「正しく音を読み通奏できたか」、中期は「楽曲に相応しいテンポや強弱の変化を表現できているか」、後期は「各楽曲特有の演奏スタイル」や音楽表現への意欲が考慮されます(カワイピアノグレードテスト16~7級)。

受験料(税込)は、15級が2,310円、10級が4,180円、7級が4,950円と、級が上がるほど高くなります。16級は受験料がかかりません。6~1級は、初めて受験する場合は6級からで、6~2級の各級は「演奏グレード」と「指導グレード」に区分されています。

カワイの区分は「何ができればその段階か」の説明が具体的なので、教本の進度より評価の観点を読んで、今の練習で足りない要素を見つける材料にするのが実用的です。

ヤマハとカワイの級を横に並べてはいけない理由

両社とも「○級」という同じ呼び方をしていますが、級の範囲も区切りも違うため、数字を直接比べることはできません。

ヤマハのピアノ演奏グレードは13級から始まり、カワイは16級から始まります。区切り方も、ヤマハは対象者(初期学習者・学習者・指導者・演奏家)で帯を作り、カワイは生徒向けの中を学習初期・中期・後期に分けています。同じ「10級」でも、ヤマハでは学習者向けの帯の入り口、カワイでは学習中期の最後の級にあたり、制度内での位置が異なるわけです。

難易度表に「ヤマハ○級=カワイ○級」と書かれていても、両社がそのような換算を公表しているわけではありません。表の作成者が教本の進度などから推定した対応だと考えてください。

比べたいときは、数字ではなく「どの段階の対象者向けか」「何を評価するか」を並べるのが正確です。以下の表で整理しておきます。

📊 3つの物差しの違い(各公式ページより)
項目 ヤマハグレード カワイピアノグレードテスト ピティナ・ピアノステップ
段階の範囲 13~11級・10~6級・5~3級・2級 16~7級・6~1級 23段階
区切りの考え方 対象者(初期学習者・学習者・指導者・演奏家) 学習初期・中期・後期(16~7級) 課題曲のレベル
教本との関係 公式の教本対応表は確認できず 区分A・Bで教本例を提示 おすすめ教則本一覧を公開
⚠️ 失敗パターン①:換算表を信じて受験級を決める

ネットの換算表で「今の教本なら○級」と判断し、初見や聴奏などの課題を準備しないまま受験してしまうケースです。原因は、グレードが教本の進度ではなく、制度ごとの評価観点で作られていることを見落としている点にあります。対策は、受験したい級の公式要項で試験内容と評価の観点を先に読み、教本の練習とは別に準備時間を確保することです。

ピティナ・ステップの23段階は教本選びにどう使える?

23段階は「課題曲のレベル」で作られている

ピティナ・ピアノステップは、23段階からなるステップレベルの合格を目指すピアノのステージで、各レベルにピアノソロと連弾の課題曲が設定されています(ピティナ・ピアノステップ 課題曲と選曲方法)。

グレード試験との大きな違いは、段階が曲に付いていることです。どの曲がどのレベルの課題曲になっているかが公開されているので、「この曲はどのくらいの段階の曲として扱われているか」を確認する手がかりになります。ヤマハやカワイの級が受験者の力を測るのに対し、ステップのレベルは曲側の位置を示す資料として読めるわけです。

ただし、同じレベルの課題曲でも、曲によって得意・不得意が分かれます。レベル表だけを見て「このレベルの曲はどれも弾けるはず」と考えると、手の大きさや苦手な音型によって思わぬところで止まることがあります。

レベルは曲選びの目安として使い、実際に楽譜を見て、苦手な音型がどれくらい含まれているかを確かめるのが確実です。

おすすめ教則本一覧と課題曲検索で「逆引き」する

ピティナは課題曲の案内ページで「おすすめ教則本一覧」を公開しており、さらに課題曲検索(ピティナ・ピアノステップ課題曲検索)も用意しています。教本の難易度を知りたいときは、この2つを組み合わせると公式資料だけで位置を確認できます。

この方法が有効な理由は、ネットの難易度表と違って、主催者自身がレベルと曲を結びつけているからです。いま使っている教本の曲名で課題曲検索をかけ、どのレベルに入っているかを見れば、第三者の推定を介さずに段階の目安がわかります。

注意したいのは、課題曲に入っていない曲は検索しても出てこないことです。出てこないからといって、その曲が易しい・難しいという意味にはなりません。また課題曲は年度で入れ替わることがあるので、参照する年度も確認しておきましょう。

逆引きで位置がわかったら、同じレベルの別の曲を次の練習曲の候補にするのも1つの使い方です。

🎼 公式資料で教本の位置を確かめる手順
Step1:出版社の商品ページで、教本の目的と「どの本の次に使うか」を読む
↓
Step2:ピティナの課題曲検索で、教本の曲名がどのステップレベルに入っているか調べる
↓
Step3:グレード受験を考える場合は、主催者の要項で評価の観点と試験内容を別に確認する

評価は合否だけでなく「S~D」のメッセージで返ってくる

ピティナの23ステップでは、ステップ当日の評価として「S」「A」「B」「C」「D」の5段階評価が記載されたメッセージが贈られます。演奏の到達度を細かく知る材料になる点が、教本選びにも役立ちます。

理屈としては、教本の進度は「どこまで進んだか」しか示さないのに対し、ステージでの評価は「その段階の曲をどの程度弾けたか」を外部の耳で返してくれるからです。同じレベルでも評価に差があれば、次に進むべきか、同じ段階の曲をもう少し続けるべきかの判断材料になります。

ありがちなのは、評価の記号だけを見て一喜一憂し、メッセージの中身を読まずに終わってしまうことです。記号はあくまで要約で、改善点はメッセージの具体的なコメントに書かれています。

メッセージで繰り返し指摘される点(テンポの揺れ、強弱の幅など)があれば、それを次の教本選びの基準にしましょう。

大人の独学で教本の順番を決める4つの判断軸

判断軸1:読譜で止まるのか、指で止まるのか

教本の順番を決める最初の手がかりは、自分が「どこで止まるか」です。楽譜を読むのに時間がかかって止まるなら読譜の問題、音はわかるのに指が追いつかないなら技術の問題で、選ぶべき本が変わります。

理由は、教本ごとに鍛える要素が違うからです。バイエルのように少しずつ要素を増やす教則本は読譜の反応を育て、ツェルニーやハノンのような練習曲は指の技術を育てます。原因と教本の役割が合っていないと、練習時間を増やしても止まる場所が変わりません。

独学の大人に多いのは、初見が苦手な原因を「音符が読めないから」と考えて音符カードばかり練習するケースです。実際には、音符そのものより調号と拍子の把握ができていないことが原因になっている場合が多く、曲の冒頭で調号と拍子を確認する習慣をつけるだけで止まる回数が減ります。

見極めは、止まった箇所を片手でゆっくり弾いてみること。片手なら止まらないなら両手の協調、片手でも止まるなら読譜か運指に原因があります。

判断軸2:技術の本と曲の本を1冊ずつ並行する

大人の独学では、技術を練習する本と、曲を楽しむ本を1冊ずつ並行する組み立てが続けやすい方法です。

理由は、練習曲だけでは「曲を弾いている」実感が得にくく、曲集だけでは技術の穴が埋まりにくいからです。定番4冊で言えば、ツェルニーやハノンが技術側、ブルグミュラーが曲側に近い役割を持っています。両方を並行すると、練習曲で身につけた動きを曲の中で確認できるので、技術が定着したかどうかがわかりやすくなります。

ありがちな失敗は、3冊・4冊と並行する本を増やしすぎて、1冊あたりの練習時間が少なくなり、どの本も進まなくなることです。限られた練習時間を分散させると、1曲を仕上げる前に次の日の練習が来てしまいます。

目安は、練習時間の前半を技術の本、後半を曲の本に使うこと。1日の練習時間の組み立て方や教本の順番については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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判断軸3:教本を途中で飛ばしてよいかの見極め

教本は最初から最後まで順番に弾かなければならないものではありません。すでにできる要素の曲は飛ばしてよく、できない要素が出てきた箇所から丁寧に進めるのが効率的です。

そう言える理由は、教則本が「新しい要素を少しずつ加える」構造になっているからです。自分がすでに身につけている要素の曲を繰り返しても、新しく学ぶことはありません。一方で、飛ばした範囲に未習得の要素が混ざっていると、後の曲で急に難しく感じる原因になります。

ブランクからの再開者に多いのは、「昔ツェルニー30番まで進んだから」と途中から再開し、指が当時の感覚で動かず挫折するパターンです。進度の記憶と、今の指の状態は別物です。

見極め方として、飛ばそうとしている範囲から数曲を抜き出し、初見でゆっくり止まらずに弾けるか試してみましょう。止まらずに弾けるなら飛ばしてよく、止まる曲があればその少し前から再開するのが安全です。

判断軸4:教本が合っていないサインを見逃さない

同じ曲で数週間止まったまま進まないときは、努力不足ではなく、教本の段階が今の自分に合っていない可能性を考えます。

理由は、1曲に含まれる新しい要素が多すぎると、どこから手をつけてよいかわからなくなり、練習が「通して弾いて止まる」の繰り返しになりやすいからです。これは教本の順番が標準的な学習者を想定して作られていて、独学の大人の得意・不得意とずれることがあるために起きます。

対処としては、1つ前の段階の教本や、同じ要素をより易しく扱う曲集に一時的に戻るのが有効です。戻ることは後退ではなく、足りない要素を別の角度から補う作業です。

もう1つ大切なのは、手首や指に痛みが出ていないかを確認することです。痛みをこらえて同じ箇所を繰り返すのは避け、症状が続く場合は医療機関に相談してください。

⚠️ 失敗パターン②:難易度表の「次の本」を機械的に選ぶ

独学で、難易度表に書かれた順番どおりにバイエルの次の本を買い、1曲目から止まって練習が止まってしまうケースです。原因は、表の順番が「標準的な進み方」でしかなく、自分が止まる原因(読譜・運指・脱力・テンポ設定)を確認していないことにあります。対策は、次の本を買う前に候補の数曲を楽譜で確認し、苦手な要素がどれだけ含まれているかを見てから選ぶことです。

子どもの教本と大人の教本、難易度表の読み方はどう変わる?

子どもの導入教本は「バイエルの前」を補う本

子ども向けには、バイエルなどの教則本に入る前、または並行して使う導入教本が多く出版されています。難易度表では同じ「初級」にまとめられがちですが、役割は少し違います。

カワイピアノグレードテストの区分A・Bでは、教本例として「サウンドツリー」「子どものピアノアルバム」「こどものバイエル」「ピアノのメトードA」が挙げられています。こうした導入教本は、楽譜を読む前段階の「鍵盤の位置」「音の高低」「リズムを感じる」といった要素を、遊びに近い形で扱う構成になっているのが一般的です。

保護者がつまずきやすいのは、「バイエルに入っていないから遅れている」と感じてしまうことです。カワイが15級~13級を「ピアノを弾くことへの興味・関心が育つ」学習初期と位置づけているように、初期段階では教本の進度より、弾くことへの興味が育っているかが大切にされています。

導入教本の段階では、教本の名前や冊数より、鍵盤の位置や初歩的な記号を理解できているかを見てあげるのがよい見方です。

グレード受験は「進度確認」として使う

子どもにグレードを受けさせる場合は、教本の難易度表と級を結びつけるより、今の学習段階で身につけるべき要素が身についているかを確認する機会として使うのが制度の趣旨に沿った使い方です。

カワイは評価の観点を段階ごとに公開しており、学習初期は「鍵盤位置と読譜、初歩的な記号の理解など」、学習中期は「楽曲に相応しいテンポや強弱の変化」を見ると説明しています。つまり同じ曲を弾いても、級によって見られるポイントが違うわけです。

ありがちなのは、級を早く上げることが目標になり、同じ教本の曲だけを受験用に仕上げて、読譜や記号の理解が追いつかないまま進んでしまうことです。級の数字は上がっても、次の段階の評価観点に対応できなくなります。

受験後は、合否よりも評価の観点に沿って「どこができていて、どこが課題か」を確認しましょう。受験料は級によって異なるので、受験の間隔を決めるときの参考にしてください。

大人は「目標の曲」から逆算して教本を選ぶ

大人の場合、子どものように体系的に全段階を進めるより、弾きたい曲から逆算して必要な要素を補うほうが続けやすい傾向があります。

理由は、大人は読譜や理屈の理解が早い一方で、練習時間が限られているからです。弾きたい曲にどんな技術(分散和音、音階、和音の連打など)が含まれているかを確認し、その要素を練習できる教本を選べば、遠回りを減らせます。前の章で紹介したピティナの課題曲検索で、弾きたい曲のレベルを調べるのも有効です。

ただし、目標曲が今の段階から離れすぎていると、必要な要素が多すぎて教本選びが定まりません。有名なクラシック曲でも、公式の区分では想像より上の段階に置かれていることがあります。

目標曲の段階を確かめたうえで、間にもう1曲、中間の目標を置くと現実的な計画になります。初心者が選びがちなクラシック曲の段階については、こちらで解説しています。

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Q 子どもがヤマハからカワイの教室に移ったら、級はそのまま引き継げますか?
A 両社は別々の制度で、級の範囲(ヤマハは13級から、カワイは16級から)も区切り方も違います。公式の換算表は確認できないため、移る先の制度の要項で評価の観点を読み、どの級から受けるかを決めるのが確実です。

楽譜を買う前に確認したい、難易度表記と版の違い

出版社の商品ページに難易度表記がないこともある

教本を買う前に出版社の商品ページを確認すると、難易度の等級が書かれていない場合があります。難易度表の情報源が出版社だと思い込まず、何が書かれていて何が書かれていないかを確認することが大切です。

実際、全音楽譜出版社の「ツェルニー:30番練習曲」の商品ページでは、作品番号Op.849や説明文は掲載されている一方、難易度の等級表記は記載されていません。出版社は「バイエル教則本の次」という順番と目的を示していますが、「初級」「中級」といったラベルは付けていないわけです。

難易度表でよく見る「ツェルニー30番=中級」のようなラベルは、出版社以外の誰かが付けたものである可能性があります。ラベル自体が間違いとは限りませんが、出典を確認しないまま引用すると、表どうしの食い違いを説明できなくなります。

確認のコツは、表に書かれた難易度を出版社・主催者の公式ページで探してみること。見つからなければ、それは作成者の目安として扱いましょう。

実は、難易度表そのものに「公式版」は存在しない

意外と知られていないけれど、「ピアノ教本難易度表」という名前の公式な資料は、出版社にもグレード主催者にもありません。どの表も、誰かが複数の公式資料を組み合わせて作った二次資料です。

ここまで見てきたとおり、出版社は教本の目的と順番を、ヤマハやカワイは級ごとの対象者と評価の観点を、ピティナは課題曲のレベルと教則本の一覧を、それぞれ独立して公開しています。これらをつなぐ換算ルールは公表されていないので、1枚の表にまとめる時点で作成者の判断が必ず入ります。

だからこそ、難易度表を「正解の一覧」として使うと混乱します。表どうしで数字がずれていても、それはどちらかが間違っているのではなく、作成者の判断基準が違うだけということが多いのです。

難易度表は「全体の地図」として大まかな順番をつかむのに使い、具体的な判断は公式資料で行う。この使い分けができれば、表の食い違いに振り回されなくなります。

💡 押さえておきたいポイント

難易度表は「大まかな順番をつかむ地図」、公式資料は「具体的に判断する根拠」。教本の目的は出版社、級の意味はグレード主催者、曲の段階はピティナの課題曲、と情報源を分けて確認すると、表の食い違いに迷わなくなります。

同じ教本でも版によって運指や解説が違う

バイエルやツェルニー、ブルグミュラーのような定番教本は、複数の出版社から出ていることがあります。曲そのものは同じでも、運指(指番号)・解説・注釈は版によって異なる場合があります。

理由は、作曲当時の楽譜をもとに、各出版社の校訂者が現代の学習者向けに運指や注釈を加えて出版しているからです。運指は手の大きさや弾き方の考え方によって複数の合理的な選択肢があるため、校訂者によって違いが出ます。

独学でつまずきやすいのは、先生やネットの解説が別の版を前提にしていて、指番号が合わずに混乱するケースです。「解説どおりに弾けない」と感じたら、自分の手の問題ではなく版の違いを疑ってみましょう。

楽譜を選ぶときは、出版社名と版を確認し、解説を参照する場合は同じ版に揃えるのが安全です。楽譜は出版社の公式ショップや、ぷりんと楽譜などの公式販売元から入手してください。

難易度表記と版を確認したら、難しい曲の難しさを測る物差しもあわせて知っておくと選曲に役立ちます。

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まとめ:ピアノ教本難易度表は公式資料と組み合わせて使う

🎹 この記事の結論

難易度表は別々の物差しを並べた目安で、公式の換算表はありません。順番は表で、判断は公式資料で確かめましょう。

✅ 要点チェック
  • ✔ 3つの物差し:教本・グレード・ステップは別物
  • ✔ 教本の役割:読譜・表現・技巧・補助で違う
  • ✔ 級の数字:ヤマハとカワイは直接比べない
  • ✔ 曲の段階:ピティナの課題曲検索で逆引き
  • ✔ 次の本選び:止まる原因を確かめてから

次の教本に迷ったら、まず今の教本で止まっている箇所を片手でゆっくり弾き、原因が読譜・運指・テンポ設定のどれにあるかを確かめてみてください。原因がわかれば、難易度表のどの本が自分に合うかが自然に絞り込めます。

※グレードの受験料・試験内容やステップの課題曲は変更されることがあるため、最新情報は各主催者の公式サイトでご確認ください。

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この記事を書いた人

ピアノと音楽の教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

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